話題沸騰のベストセラー『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』の刊行を記念して、著者の山口周氏と、『アフター・デジタル』等のベストセラーを多数持つ、IT批評家の尾原和啓氏との対談イベントが実現。これまで未来を切り開く新しい視点を提供してきた2人が、今起こっている社会の変化を読み解きながら、これから求められるオールドタイプからニュータイプへのシフトについて語り合う。昭和終焉後の、新しい「幸せの原理」とは? 企業でも学校教育でも、日本が取り残されているのはなぜなのか?(構成:山田マユミ)
昭和が終わった後の、
新しい「幸せの原理」とは?
尾原:新刊『ニュータイプの時代』を読ませていただきましたが、山口さんらしからぬタイトルですね(笑)。
山口:ガンダム世代としては、「ニュータイプ」「オールドタイプ」という概念に馴染がありますからね。シャアは「重力に縛られた人間」を「オールドタイプ」と呼びましたが、新旧の価値観を持つ人たちを分ける言葉として、わかりやすいのでは。
尾原:つまり山口さんとしては、この本によってオールドタイプに「コロニー落とし」(*1)をしてやるぞ、という意図があるんですね?(笑)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『劣化するオッサン社会の処方箋』『知的戦闘力を高める 独学の技法』『武器になる哲学』など多数。神奈川県葉山町に在住。
山口:そうですね(笑)。ある意味、昭和的価値観へのコロニー落としと言えるでしょう。
尾原:では、今回の本では、オールドタイプ、ニュータイプは、何を指すのでしょうか。
山口:もともとこの本を書こうと考えたのは、尾原さんが書かれた『モチベーション革命――稼ぐために働きたくない世代の解体書』がきっかけなんです。この本は、端的に言えば、「世代によってインセンティブの種類が違う」ということでしたよね。
尾原:そうですね。何がその人にとって快楽なのかは、世代によって違うということです。
山口:『ニュータイプの時代』でも、これまでの昭和的価値観が崩れ始めていて、人によって生き方や働き方で重視する「意味合い」が大きく変わってきている、ということを書きたかったんです。
IT批評家、藤原投資顧問、書生
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『どこでも誰とでも働ける』など多数。
尾原:『モチベーション革命』では、「乾いた世代/乾けない世代」「ないものがあった世代/ないものがない世代」と表現していますが、要するに、昭和世代は、戦争を経験して一度焼け野原になった後、東洋の奇跡と言われるほどにビルを建て、街をつくり、一人一人がテレビを持ち、自動車を所有して……という、「ないもの」「ゼロになったもの」を埋めることで幸せになってきた世代なんですよね。
この「乾いた・ないものがあった世代」の人たちは、明確に埋めるものがあるから、達成することで幸せになり得たといえます。「達成したらみんなでおいしいものを食べよう」「美女と一緒に過ごそう」といった身体的な快楽が、人の幸せの原理になりやすかった。
一方、45歳くらいから下、特に38歳以下の方に顕著ですが、彼らは生まれた時から埋めるべきものがない、「ないものがない世代」です。彼らからしたら、これまで「埋めよう・達成しよう」として全力疾走してきた世代が、今度はバブル崩壊で壊れてしまったことは、正直「ダサい」と感じている。
その結果、彼らの幸せは、何かを埋めたり、達成したりすることではなくて、「意味合い」「没頭(没入)」、そして良好な「人間関係」の3つを満たすことになってくるんです。