悪夢で繰り返し蘇る
殺意の記憶
(どうしよう、あの神社の裏庭、掘り返されたら私が埋めた死体、みつかっちゃう)
清美さん(仮名・27歳)は、悪夢にうなされて目が覚めた。心臓はドキドキし、全身が冷たい汗で濡れている。
本当は誰も殺していない。ただ、(殺してやろうか)と思った後ろめたい記憶が、繰り返し、悪夢となってよみがえるのだ。
それは10年前、高校2年生の時だった。
夏休みも中盤に差し掛かったある日の夕方、中学の同級生だったA子さんに会った。「久しぶり」と声をかけると、「おうっ」と言って自転車を降りてくれ、立ち話になった。聞けば、学校の社会科の先生の手伝いで、市政に関するアンケート調査を行うアルバイトをし、給料をもらって帰宅する途中だという。バイト代は1週間で2万円ちょっと。安いが「社会勉強になったからいい」と笑う。
地方の中くらいの街で、A子さんは市内唯一の進学校に通う真面目な少女。かたや清美さんは、ヤンキーのたまり場のような低偏差値の高校に入り、ほとんど学校へは行かず、遊びまわっていた。
2人の接点は中学の時、たまたま同じ班になり、ある課題を一緒に発表したことだった。勉強が苦手な清美さんには、何がなんだか分からない内容だったが、A子さんはニコニコしながら優しく教えてくれた。
印象的だったのは清美さんの家で作業した時のこと。父親は大工だったが、ケガであまり働けなくなり、家計は苦しかった。母親は心臓が悪く、玄関に入ってすぐの茶の間に布団を敷き、いつも寝ていた。