――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は今週、ワシントンに集まり利下げについて検討するが、その決定の大部分は、すでにフランクフルトで下されていたことになる。
欧州中央銀行(ECB)の中銀預金金利はマイナス0.4%と、FRBの政策金利であるフェデラルファンド(FF )金利をすでに300ベーシスポイント(bp)近く下回っている。またマリオ・ドラギECB総裁は先週、近くマイナス金利の深堀りに踏み切る可能性を示唆。FRB当局者はここにきて、米国の金利が外国の金利水準から大きくかい離することは許容すべきではないと結論づけた。そのため米経済は欧州経済よりもはるかに堅調であるにもかかわらず、ECBの後押しにより、FRBは行動せざるを得ない状況に陥っている。
世界情勢はこれまでも常にFRBに影響を及ぼしてきた。他国のリセッション(景気後退)や危機が米国の輸出や金融市場に打撃を与える可能性があるためだ。ジェローム・パウエルFRB議長はおそらく利下げに踏み切るであろう理由の一つとして、世界経済の弱含みを挙げた。FRBが米国の政策金利を決定するにあたり、海外経済の動向だけでなく、海外の金利水準についても勘案し始めた点が、これまでとは異なる新たな傾向だ。
FRBのリチャード・クラリダ副議長は先頃、Foxビジネス・ネットワークに対し「米金利は世界の金利水準からある程度はかい離できるが、資本市場の統合が進んでいるため、そのプロセスには限界がある」と述べている。