――筆者のクローディア・ロゼット氏は米「インディペンデント・ウィメンズ・フォーラム(IWF)」の外交政策フェロー。WSJのために天安門事件を取材した経験を持つ。
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香港の抗議行動参加者らは、1989年の天安門での抗議行動以来最も激しい批判を中国の専制政治に突きつけた。8週間にわたって続いているデモを受け、現在問われているのは、中国の独裁者である習近平国家主席が、30年前の民主化運動鎮圧の際と同じ、容赦ない軍事力の行使に踏み切るかどうかだ。状況を真剣に分析している人々は、こうした反動的行動が起きることを懸念している。
2013年に権力の座に就いた習氏にとって、香港の状況は、彼の国内政策の正当性を直接的に脅かすものとなっている。ハイテク技術による驚愕すべきレベルの監視態勢に支えられた国家による抑圧は、習氏の政権下で強化された。西部の新疆ウイグル自治区では、中国政府は、国際的な非難にもかかわらず、収容施設に入れられた推計100万人のイスラム教徒のウイグル族に対し、2年前から拷問や政治的洗脳を行っている。香港での抗議行動への厳しい対応は、香港市民、そして中国の他の地域に対し、誰がボスなのかを思い出させるだろう。
習氏の主要な関心事は、この抗議行動が中国本土に飛び火するのを防ぐことだ。香港の抗議行動参加者らは、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする条例案が示されたことを受け、中国の一党支配体制の恐怖に反旗を翻した。同様の感情は、中国本土の14億人の住民の間でもくすぶっている。中国政府は、大量の検閲官、治安要員を配置して、本土の市民を監視下に置いている。本土の中国人たちは、抗議行動の手法、あるいは目的にさえ賛同しないかもしれない。しかし、毎月何百万人もの本土の人々が香港を訪れており、その多くは、香港市民が中国政府に逆らっても、何のとがめも受けていないことに気付いている。