大手芸能事務所からの独立によってタレントが「干される」「テレビに出演できない」状態に陥るという、一般社会では考えられない慣習が世間の強いバッシングを受けている。では、もしタレントの独立や移籍が自由になると、どうなるのか。私は芸能事務所がタレントを育成しなくなり、芸能界の衰退へとつながる可能性があるので、何かしら合理的な「対策」を講じる必要があると考えている。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
事務所がタレントを
拘束しているとの批判あり
芸能界では、芸能事務所が所属しているタレントを拘束しており、自由な独立(移籍を含む、以下同様)を認めない慣習があるようだ。筆者は芸能界の事情に疎いので、個別のケースについても芸能界全体の実態についても把握していないが、理屈で考えると、ありそうな話である。
芸能事務所はタレントを養成し、売り出すためにコストをかけている。独立を阻むのは、それを回収する前にタレントにいなくなられると困るからである。そこで、「テレビ局などに圧力をかけて独立したタレントを干し、独立しようとするタレントが今後出ないようにする」というのは、芸能事務所の立場からすれば合理的な行動と考えられる。
もちろん、タレントの自由や人権の観点から考えれば問題があることは筆者も十分認識しているが、以下では仮に芸能事務所に対してタレントの拘束を全面的に禁止したら何が起きるのか、頭の体操をしてみよう。