芸人からの「搾取」は
そもそもどれくらいあったか
「闇営業問題」をめぐる一連の騒動を受け、吉本興業の岡本昭彦社長によって7月22日に行われた5時間を超える会見は、本当にグダグダでした。会見を見た所属芸人たちから次々と不満の声があがったという結果を見れば、これは吉本興業の求心力を保つという意味においては大失敗だったといえます。
さて、長時間にわたる会見の悪い点は、何が論点なのかが、段々わからなくなってくることです。実際、問題の論点が多様化し、そもそも吉本興行の何が問題だったのかという考察が置き去りにされつつあるように感じます。
今回はそのなかでも重要と思われる「搾取」というテーマに絞って、問題を掘り下げてみたいと思います。「搾取」は私の専門領域でもあります。
取り上げたいのは、吉本興業のギャラに関してです。会見では「ギャラが安いのでは?」という質問が出ましたが、それに対する回答の中で、岡本社長は会社と芸人との現在のギャラの取り分を「ざっくりとした平均値で言っても、5対5から6対4」という数字を挙げて説明しました。
この6対4という数字の配分は、会社が6割、芸人が4割ですが、これを聞いた所属芸人から「会社はもっと搾取しているじゃないか」という旨の抗議のツイートが相次ぎました。
この認識のギャップは何なのか。そしてそもそもこの搾取の水準は適正なものなのか。この点について、一般的な経営原則と世間の大企業における実際の搾取の事例から、考えてみたいと思います。
そもそも資本主義の歴史は、労働者からの搾取の歴史です。法律が整備されていない時代、資本家は可能な限り劣悪な条件で労働者を働かせ、利益をあげようと考えていました。それが数多の労働争議を経て、日本でも労働三法のような法律ができ、会社員の給料には最低賃金が設けられるようになりました。