2018年10月、ニューヨークのオークションでワインの最高落札価格が更新された。出品されたのは1945年産のロマネコンティ。1本55万8000米ドル(約6000万円)という驚きの価格がついた理由はどこにあったのだろうか?(プレミアムワイン代表取締役 渡辺順子)
超高値で落札された
ワインの持つ歴史と物語
ワイン業界で「これ以上のワインはもう出ないだろう」と言われるのが、1945年産のロマネコンティだ。
ロマネコンティは毎年6000本程度しか生産しない、「世界最高峰の高級ワイン」である。中でも1945年は第二次世界大戦の終戦の年で、たった600本しか作っていない上に、ロマネコンティの真のDNAを持つブドウで作られ、非常に素晴らしい出来の年として知られている。
過去、オークションの世界では、この「幻の45年産ロマネコンティ」を巡ってフェイクワインがいくつも登場し、コレクターたちを泣かせてきた。
しかし、「1本6000万円」の値段がついた2本のロマネコンティは、“由緒正しい出自”を誇る、正真正銘の本物である。1945年当時、ロマネコンティのディストリビューターだったネゴシアン(ワイン商)があるのだが、このネゴシアンが長らく保存していたのだ。
しかも、このネゴシアンの当主、戦後に無実の罪でドイツ軍に捕虜として捕まってしまう。牢屋から愛妻に送った手紙が今も残っているのだが、「アイラブユー」というような内容ではなく、「ロマネコンティはこうやって保管しておいてくれ」という指南をとうとうと書きつづってある。
当主が執念を燃やして良い保存状態を保っていたワイン。物語性も十分にある。これをコレクターたちが見逃すはずはなく、すごい勢いの競り合いが起きた。2本出品されたのだが結局、アメリカ人と中国人がそれぞれ1本ずつ落札した。
近年、高値落札をするのはもっぱら中国人だったのだが、アメリカ人もやるときはやるものである。ちなみに、赤ワイン1本は、およそグラス6杯分。つまり1杯1000万円ということになる。