2種類の要求水準を
使い分けてみる

 高い数値目標を立ててモチベーションを上げることは必要だとしても、いくら精力的に頑張ったところで、必ずしも成果につながるわけではない。そこで、もう1つ工夫すべきは、2つの要求水準を使い分けることである。

 つまり、取り組む前は、現実的な範囲内で高めの要求水準を示すようにするのである。

 例えば、これまでの実績からして少なくとも100は可能、頑張れば120あたりまで伸ばせるかもしれないという状況で、無難に105あたりを目標に設定したとしよう。達成はしやすいもののチャレンジ性が乏しいため、モチベーションは高まりにくい。

 同じ状況で130を目標にすれば、達成できない可能性は高いものの、そこを目指すことで、120に到達できるかもしれない。

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 したがって、何らかの課題に取り組むに当たって、モチベーションを高く保つコツは、多少高めの要求水準を掲げることである。

 だが、目標をクリアした後は、要求水準を現実的なレベルに引き下げるのが、モチベーションを維持するコツとなる。

 先ほどの例で、130を目標にし、結果120に到達したとしても、評価時点の要求水準は前年度実績の100に置く。そして、20も上回っていることを評価する。それによって評価に納得でき、達成感も得られることから、次に向けてのモチベーションを高く維持することができる。ただし、従業員のモチベーションだけでは解決しない部分もある。

 今回のかんぽ生命のケースでは、過重なノルマ設定の背景として、組織が利益を上げるための方法に行き詰まっていたという問題がある。そこを何とか解決しないことには、いくら局員を数値目標で駆りたてたところで歪みが出るばかりである。

 したがって、その打開策として、利潤を生むための新たな仕組みを構築するという方向を模索すべきだろう。

 評価の仕組みと同時に儲けの仕組みを工夫する。これは、低成長時代の中で、あらゆる業界の課題ではないかと思う。