レンタルなんもしない人引越しの際の見送りから離婚届提出の同伴、好きなアニメを一緒に見てほしい...レンタルなんもしない人の元には、実に様々な依頼が舞い込む

サービスとは基本的に“なにかをしてもらう”こと。そんな概念を覆し、“なにもしない”ことをサービスにして職業化してしまった男性がいる。自らをブランド化させる『レンタルなんもしない人』から、これからの働き方のヒントを探った。(清談社 藤野ゆり)

レンタルなんもしない人の
“なんもしない”サービスとは?

「『レンタルなんもしない人』というサービスを始めます。1人で入りにくい店、ゲームの人数合わせ、花見の場所とりなど、ただ1人分の人間の存在だけが必要なシーンでご利用ください。国分寺駅からの交通費と飲食代だけ(かかれば)もらいます。ごく簡単なうけこたえ以外、なんもできかねます」

 2018年6月、上記のツイートにより始まった「レンタルなんもしない人」の“なんもしない”サービス。開始からわずか1年で、『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)、『〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。』(河出書房新社)と書籍化、週刊モーニング(講談社)でのマンガ化に始まり、バラエティーやラジオ番組の出演、最近ではNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』での密着取材など、ツイート主である「レンタルなんもしない人」は、なぜかメディアに引っ張りだこだ。

 彼のもとには、たとえばこんなユニークな依頼が舞い込んでくる。

『今度10年住んだ東京を離れて、地元の大阪に引っ越しするのですが、もし空いていたら「友人の見送り」をレンタルしたいです』

『「自分に関わる裁判の傍聴席に座ってほしい」との依頼。民事裁判で、依頼者は被告側。名誉毀損で訴えられていた。初裁判の心細さというより、終わって一息つく時の話し相手が欲しいとの思いで依頼に至ったらしい』(『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』より)

『ピアノの練習をしてる間、ただ居てほしい』という依頼で音大の練習室へ。何時間も弾いていると気が狂いそうになるらしく、人がいることで集中力を保てるとのこと』(同上)

「『主人の職場に息子のお披露目に行くが、子連れでの電車移動にまだ不安があるので同行してほしい』という依頼。無事職場にたどりつくのを見届けた(なぜか僕も入れてもらえた)」(レンタル氏のツイートより)