中国人観光客だらけだった
バンコクに異変
「どこに行っても中国人観光客でいっぱい!」――つい最近まで、世界のあちこちでそんな悲鳴が聞かれた。大型バスからゾロゾロと降りるや名所旧跡で撮影大会、ショッピングモールでの爆買い…大陸からあふれ出る中国人観光客は、世界の人々の度肝を抜いたものだった。
ここ数年、タイ・バンコク在住の友人からも「バンコクはどこに行っても中国人観光客だらけ」だと聞かされていた。昨年、タイ旅行を楽しんだ別の友人から聞いた土産話も「タイの有名寺院は中国人観光客ばかりだった」というものだった。タイは過去3年連続で、中国人の間で最も人気のある渡航先に選ばれている。
だが、ちょっと様子がおかしい。先月訪れたバンコクで、筆者はほとんど中国人観光客の姿を見ることがなかった。バンコク観光には外せない仏教寺院のワットポーは、まばらな観光客とともに静かなたたずまいを見せていた。
ウォーターフロント開発で新たな観光名所に加わったアジアティック・ザ・リバーフロントでは、何人かの個人旅行中の中国人観光客とはすれ違ったが、それと思しき団体は皆無だった。空港の付加価値税還付(VAT)の窓口には、一人として中国人観光客はいなかった。
タイはGDPの約20%が観光業収入という、日本をしのぐ観光立国だ。タイ観光協会によると、訪泰外国人観光客数は2017年に3535万人、2018年には3828万人であり、そのうち約3割が中国人観光客だ。2018年には、その数は1000万人の大台を突破したという。