30坪の店舗はハンデではなく武器になる
日々の環境に合わせた店づくりを実現

——限られた規模をバネに、山本さんが注意して取り組んでいることはありますか?

山本 広さ30坪程度で決して大きな店舗とはいえないため、棚に1冊置かれているようなロングセラー商品など、品揃えで勝負することは難しいと思います。一方で、この規模だからこそ色々なことを柔軟に試しやすいとも言えます。積極的な仕掛け販売で、月に何本“当たり”の商品を作れるのかを狙っています。

——「色々なことを柔軟に試しやすい」についてもう少し詳しく教えてください。

くまざわ書店大手町店 山本善之さん(前編)<br />「できないことを探してもキリがありません」<br />30坪のハンデを武器に変え、競合店に立ち向かう<br />日本を代表する金融機関が軒を連ねる大手町界隈
ニーズに合致した商品展開を強く意識している

山本 書店はその日に売れる本をしっかりと売っていくことが基本だと思います。大型店舗になると日々の環境に合わせたお店をつくることは難しいかもしれませんが、うちの規模であればガラッと変えることもできます。日々のニュースに敏感な大手町界隈では、それが武器になっていると思います。

 また、とても小さなことかもしれませんが、商品が入荷して、バックヤードに運び、段ボールから出して、そこから店頭に並べてという過程を見ても、30坪のお店であれば各行程を短縮できるため、「できるだけ早く商品を出す」という強みはあると思っています。

——近隣には強力なライバルとなる全国有数の大型書店があります。競合店に負けないために、山本さんが意識して取り組んでいることはありますか?

 時間が許す限り、周辺のお店を視察するようにしています。近隣の大型店舗のように、発売日からドーンと商品を並べることはできませんが、冊数は限られていたとしても、同じ商品をくまざわ書店大手町店にも置いておきたいですね。

 くまざわ書店大手町店の開店は朝8時、夜は23時まで営業しています。18時以降にいらっしゃるお客様が多いかな。大型書店に行けば目的の商品が置いてある、ということをほとんどのお客様がわかっていると思います。しかし、忙しくてそこに行くことができず、うちのお店にせっかく立ち寄ってくれたとき、「商品がない」という思いをしてほしくはありませんから。