店内の至る所に遊び心があふれていて、思わぬ本との出会いを演出してくれる場所。今回伺った三省堂書店有楽町店は、ひと言で言うとそんな書店です。そこでビジネス書の責任者を務めるのが、岡崎史子さん。心から楽しそうに仕事のことを語ってくれる言葉の裏に、仕事への姿勢が見え隠れします。
前編では、数多くのお店、さまざまなジャンルを経験された岡崎さんだからこその仕事観から、「ONE PIECE」をレジ前平台にドカ積みしたエピソードまで、まさに盛りだくさんでお届けします!
「何でもあり」、だから書店が好き
意外な原点、「立ち読みはしご時代」
――いつも面接みたいと言われて不評なんですけど、今回もこの質問からいきます。書店員さんになったきっかけはなんでしょう?
岡崎 私ってそこまで読書家じゃないんです。けど、本屋さんで立ち読みするのはものすごく好きで。中学のとき、塾の行き帰りとか頻繁に通っていましたね。それで、塾に遅刻してしまったりとかして(笑)。
――立ち読みしすぎて?
岡崎 そうです。高校のときも、帰り道に何軒か本屋さんがあったんですけど……。
――まさか、「はしご」ですか?
岡崎 はい(苦笑)。昔は、長居すると怒られるんじゃないかとか思って、「はしご」していました。本屋で働き始めると、そんなことはないってわかりましたけど。
本屋さんって、何でもあるじゃないですか。流行の小説もあるし、気になる芸能人が載っているのもあるし、今話題の事件のものもあったりもして。かと思えば、美味しそうな本もあって。何でもありだから、本屋さんという空間が好きなんです。それでついつい入ってしまうという。
私は2003年入社なんですけど、その頃はちょうど就職氷河期だったんです。みんな就職が決まらなくて。だったら好きなことしよう。そう思って書店を志望しました。
「新聞に載っていることが、売り場にある!」
わからないことだらけのビジネス書売り場で見つけた「楽しさ」
――三省堂書店に入社されて、最初に配属されたのはどこでしたか?
岡崎 最初は神保町本店の3階ビジネス書売り場です。
――最初からビジネス書ですか?
岡崎 はい。でも、いわゆる王道の「ビジネス書」ではなくて、会計などの専門的な分野を多く担当していました。あと、法律書の補佐もやっていましたね。
1年半くらい、比較的専門的なジャンルで仕事をしていたんですけど、その後は、ビジネス書を離れました。コンピュータ書の担当に異動になったり、名古屋のお店に異動になってコンピュータ書や理工書を担当したり。名古屋では、カレンダーなどの物販系の担当もしていました。
結局名古屋には2年半近くいて、その後、新宿でコンピュータ、理工、人文書を担当し、現在の有楽町店に異動になったときに、ビジネス書の担当に「戻ってきた」というわけです。
――そんなに多くのお店とジャンルをご経験されているとは……!