他業種で学んだ経験を現在の仕事に生かす

——自ら積極的な視察をするようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

山本 じつは、私は新卒でくまざわ書店に入社した社員ではありません。もともとは、大手クラフト系雑貨チェーンで働いていました。チェーンの中でも巨大店舗の吉祥寺店です。

――それは珍しい経歴ですね。吉祥寺のお店でも視察を?

山本 新宿にある競合店を定期的に視察するように命じられていて、「見たことのない商品があったら買ってこい!」とも言われます。もし、同じ商品を安く販売しているようなことがあれば、店に戻って慌ただしく対応しなければなりませんでした。このときの経験から、競合店を自分の目で見て研究するクセがついているのだと思います。

——前職での経験はくまざわ書店での仕事に生かされていると思いますか?

山本 入社試験の面接でもその話をして採用してもらいましたし、やはりあると思います。たとえば、雑貨チェーンにいたことで、品揃えという面を強く意識する習慣が身につきました。

 また、私が働いていた吉祥寺のお店は本当に大きな店舗だったので、お客様の目に入るように同じ商品を大量に並べていました。多面で商品を並べる効果を当時から感じていたので、それは書店でも生かしています。

まだまだ「大変です」なんて言えない

——反対に、最も大変だったことは何でしょうか?

山本 書店の品出し方法については、雑貨店に限らず、ほかの小売店と大きく違うと思います。通常の小売店は新商品の点数が限られているので、新しい商品が入荷したらもともとあった場所に置く、もしくは簡単な入れ替えで対応できます。その点については、あまり技術を必要としませんでした。

 しかし、書店には毎日たくさんの新商品が入荷してくるため、1日ごとに棚を変えていかなければなりません。この違いには、書店で働きだしてからもなかなか慣れませんでした。

——精力的にさまざまな工夫をされていて毎日忙しいと思いますが、体力的な面はいかがでしょうか?

山本 体力的には前職のほうが大変だったかもしれません。吉祥寺店は売上も非常に大きく、来客数も想像を絶していました。それを考えるとまだ大丈夫です。

——お〜とても頼もしい言葉が。「まだまだ余裕があるそうです」と部長に伝えておきます。

山本 それは絶対に言わないでください(笑)。ただ、真面目な話ですが、どこの店長もマネジメントと通常業務を同時にこなしているため、スタッフの多い大型店舗のほうがより大変だと思っています。それを考えると、大手町店で「大変です」とは言えません。