日本を代表する企業が軒を連ねる東京都千代田区。地下鉄大手町駅の改札を出るとすぐ、くまざわ書店大手町店が目に飛び込んできます。大型書店が隣接する競争激しい環境のなか、限られた面積を武器に独自のカラーを打ち出すことで、多くのビジネスマンから支持されている書店です。
くまざわ書店大手町店で昨年から店長を務めるのが山本善之さん。大手雑貨チェーンから書店に転職した異色の経歴の持ち主です。前編では、山本さんがくまざわ書店に転職してから大手町店に就任するまで。そして、30坪の書店が日本有数のビジネス街で戦っていくために意識していることを語っていただきました。
できないことを嘆いても仕方ない
自分にできることは何かを模索する日々
——くまざわ書店大手町店には、いつから勤務されているのですか?
山本 2009年の開店当初もお店にはいましたが、オープンから2ヵ月ほどで元々いた松戸店に戻ることとなりました。店長として大手町店に勤務しているのは、2011年の7月からです。
——入社してからずっとビジネス書の担当を?
大手雑貨チェーンからの転職という経歴の持ち主だ
山本 いえ、松戸店から大手町店に配属されたときに、「じゃあ、ビジネス書やってね」と言われてからです。最初はどうしようもなかったと思います(笑)。あらゆることから学ばなければいけないと思い、本を読んだり、他店舗を見て回ったり、出版社の営業さんに尋ねたりと、少しずつ勉強していきました。
——お話をうかがっていると、すでにいろいろな店舗を経験されているようですね。大手町店で働くまでのキャリアを教えてください。
山本 入社して最初は、池袋店に配属されました。当時はメトロポリタンプラザという名前でしたが、今はルミネに変わっています。そこで1年間。そのあとは松戸店に1年間。このときに大手町店がオープンしたので、途中の2ヵ月ほどは大手町店でビジネス書を担当しています。その後、高輪店に店長として1年間、そして今の大手町店に来てからも約1年が経ちました。
——くまざわ書店大手町店にはどんなお客様が来店されますか?
山本 「大手町」というエリアは、ショッピングセンターなどへの出店が多いくまざわ書店のなかでは非常に特殊な立地にあります。金融機関に囲まれているため、金融関係と思われる方がよくいらっしゃいますね。訪れるお客様の年齢はやや高く、女性よりも男性客が多いように感じます。
——大手町は日本有数のビジネス街ですよね。サラリーマンの歩くスピードが早くてビックリしました。
山本 分厚い金融関係の書籍を朝の1時間や閉店間際にまとめて買っていかれる方もいらっしゃいますよ。「ゆっくり本を選ぶ時間もないほどに忙しいんだ」といつも驚かされています。
——これまで働いていた店舗と大手町の違いは、どのようなときに感じますか?
山本 たとえば、商品に関する質問を受けることがほとんどありません。お客様自身の知識が豊富というのもひとつの理由だと思いますが、大きな店舗ではないため、「置いてない商品もある」と“割り切って”利用されているかもしれません。
その一方で、大手町周辺はとても入り組んでいて分かりにくいため、近隣大型店の場所を知らないお客様にとっては、くまざわ書店が“すべて”になっている可能性もあります。
競合店と比べて規模が小さいことを嘆いて、できないことを探してもキリがありません。来ていただいている以上、「お客様のニーズに応えるために、自分ができることは何か」をいつも探しています。