昨年9月にオープンしたMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店は、渋谷にいることを忘れてしまうほど落ち着いたお店で、いつ行っても真剣に本を探す人であふれています。そんなお店でビジネス書を担当されているのが、安齋千華子さん。
前編の今回は、ジュンク堂書店の池袋店、新宿店と大型店を渡り歩いてきた安齋さんに、入社当時大変だったことから、ジュンク堂に入った意外な経緯、そして「図書館みたい」と言われがちなジュンク堂書店が図書館とどう違うのかまで語っていただきました。時代の流れを反映する「棚」づくりの秘密にも迫ります!

「問い合わせの数だけ、成長していきました」
お客さまの問い合わせを「翻訳」し、最適な案内ができるまで。

――ジュンク堂書店、と言えばやはり圧倒的な本の量。新卒でジュンク堂書店さんに入社されたとお聞きしましたが、働き始めたとき何が一番大変でしたか?

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店でビジネス書を担当されている安齋千華子さん。今回のインタビューでは、「棚」づくりへの想いを語ってくださいました。

安齋 まずは覚えること、でしたね。知らない言葉ばかりでしたので。入社してすぐに池袋店で働き始めたのですが、棚の大まかな配列を覚えるだけでも大変でした。

――たしかに、あの池袋店だと覚えることは多そうですね。最初からビジネス書を担当されていたんですか?

安齋 はい。配属された5階のフロアは、ビジネス書だけではなく法律も経済も資格もありました。だから最初はお客さまが言う言葉がわからないんですよね。いきなり「SCMの本どこ?」と聞かれても、「なんだろうそれ」となっちゃって。徐々に、体で覚えていく分と、新聞や本を読んで覚えていく分とでなんとか追いついていきました。

――どういった勉強をされたんでしょう?

安齋 どういう知識が必要でどうやって身に付けていけばいいのか、というのを先輩たちに聞いて回りました。言われたのは、ひとつは日経を読めということ、そしてもうひとつは、『経済のニュースが面白いほどわかる本』のようなもので基礎知識をつけておけ、ということでした。

 他には、理論や略語を学べる入門書のようなものを読んで勉強していました。実際にその知識を実務に使うわけではありませんが、聞かれている内容に答えるためにはどうしても必要でした。

――お客さんの言っていることを「翻訳」して理解していかないといけない、と。実際に覚えてきたな、と実感できるまでにどれくらいかかりましたか?

安齋 「だいたい把握するのに3ヵ月くらいかかるし、本当にちゃんと把握するのには3年くらいかかる」と言われていましたが、実際のところその通りでした。1冊1冊の本について、タイトルを聞いてこの本だったらそこにある、と言えるようになるには、それくらいはかかりましたね。

 結局のところ近道はなくて、問い合わせで聞かれて、自分で商品を棚に入れて、覚えていきました。問い合わせを受けた数だけ覚えていく、という感じですね。