Life is tough.人生はジェットコースターに乗っているみたい。

――もうお話はできない状態だったのですか。

大江 「ほら、ブルックリンだよ」と地下鉄の窓から見える景色にかざして…。

 ちょうどNYでのソロライブの後、そしてトリオのRecordingの前、何とか父に会いに帰れないかと思い航空会社に電話したら、奇跡的に2泊大阪に帰れた。ラッキーでした。とんぼ返りで父に会いに帰って、僕がニューヨークに戻ったところで亡くなったという電話が妹からありました。

――いやあの、ずっといろんな取材のタイミングのオフトークで、千里さんのお父様の話を伺っていて、私も新聞記者スタートだったので、勝手にそのジャーナリスティックな視点に共感していたのです。千里さんのポップス時代のアルバムのなかで「1、2、3、4」が最高傑作だと思う、とか。過ごされた最期の時間の千里さんとのやりとりも、本当に素晴らしいなあと思います。

大江 NYに戻る前の晩…。もう全然動かない父がいきなり紙とペンを催促して僕に「ビ、ー、ル、の・め・る、か?」と書いたのです。たまたまノンアルコールビールを一缶自分用に買っていたので、開けて、急須にいれて、二人で乾杯しました。1時間以上かけて飲み干しましたからね。奇跡が起こったんです。

――…。

大江 Life is tough。人生はジェットコースターに乗っているみたい。いいこともそうじゃないことも左へ右へと次々に。そしてやっぱりジェットコースターは途中では止まれないのです。だから、スピードは緩めずに、それをどれだけやりきるか、楽しむかっていうことなんじゃないか。

 Hmmm…これは今タフかもしれないけれど、レコーディングは中止しない。やろう、と決めました。アリとマットがいてくれれば、シートベルトさえしっかり締めていれば転がり落ちることはない。かなり計算されたハイレベルなRideに僕は乗っているのだから。

 Hmmm…今感じてる正直なすべてを自分の力量のなかで楽しく演奏して出せば、面白いものがつくれるかもしれない、と。

 さっき、エディットが終わったとNYのエンジニアから報告があったので、今夜中にNYからその音が東京へ届き、ミックス、そしてマスタリングと東京で行われます。マスタリングは僕も立ち会えます。