しかもこの世代の女性たちには、手のひらの上で夫を転がすほどのしたたかさはありません。単刀直入に自分の価値観や要望を主張してくるでしょう。

「あなたの実家とそりが合わない。付き合いはそろそろ遠のかせて」

「あなたの趣味や遊びに年金をつぎこむのはやめてほしい」

「私は居酒屋の女将(おかみ)じゃない。飲み仲間を連れてこないで」

 共働きでお互いを支え合った夫婦ならとっくに「すりあわせ」ができていますが、リタイア生活で初めて知った妻の本音に困惑したり、聞く耳を持たない、いまさら自分の生き方を変えられない、うんにゃ、自分のこだわりも貫くぞという勇ましい夫もいるから、ことは簡単にすまないのです(面倒くさい世代ですね、笑)。

「1分でも長く
1メートルでも遠くに離れている」

 多様化した夫婦関係の修復やリセットのトリセツもまた多様です。最もポピュラーなのが、夫婦で共通の趣味や生きがいを持ち、旅行やボランティアにカップル単位で参加して楽しもうという「定年後トリセツの正論」。

 しかし「夫がそばにいれば妻は喜ぶ」「気心の知れた妻といっしょなら夫も外に出やすい」という夫サイドだけの都合にあわせた官製発想では、人生100年時代の30年の長すぎる余生を無事に送るのには無理がありそうです。

「夫源病・主人在宅ストレス症候群」は多くの場合、真面目すぎる妻が旧来のトリセツどおりに「いい夫婦」を演じようとエネルギーを使いすぎておきる心身症です。

 役割の義務感にとらわれながら「自由がほしい、夫から解放されて自分自身のために時間を使いたい」本音とのはざまで体調不良を起こします。精神科医がすすめる特効薬は「1分でも長く離れている、1メートルでも遠く離れていること」。ストレス回避に相手との距離をとった環境づくりが必要というのは、30年の余生にも通じる大事なフレーズでしょう。

 妻のストレス軽減のために学生向けのアパートを借りて朝夕の「疑似出勤」をし、ついに起業した人もいれば、自宅を2所帯の間取りにリフォームしてお互いに自分好みの空間を確保した夫婦もいます。空き家になった実家を活用するのもいいかもしれません。