「新しい時代の生存戦略」をテーマとした『ニュータイプの時代』。その第6章で述べられている「ニュータイプのキャリア戦略」について、ベストセラー『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)著者で、キャリア領域の第一人者・北野唯我氏に話を聞いた。「大量に試して、うまくいったものを残す」キャリア構築法の是非や、キャリアにおける「逃げ」の捉え方、そしてマンガ『ワンピース』と『進撃の巨人』から学ぶ、令和を牽引する「ニュータイプ」像まで語ってもらった。(取材・構成/モメンタム・ホース ゆぴ(17)、編集/同 小池真幸)

「計画性」と「偶有性」
どちらも大切

 僕は『転職の思考法』(ダイヤモンド社)のなかで、「伸びる市場の中から、ベストな会社を見極める」計画的なキャリア構築法を述べました。一方、本書では「大量に試して、うまくいったものを残す」といった、偶有性に根ざしたキャリア構築法が提唱されています。

 一見、山口さんと僕の考えは、相反しているように見えます。しかし僕は、どちらも「アリ」な戦略だと思っています。

 そもそもキャリア論とは戦略論の1種で、「成功確率を上げる」ための方法論であり、「これをやれば必ず成功する」という“魔法の杖”ではありません。計画性と偶有性、それぞれに根ざした戦略が重要なタイミングがあるので、両者を使い分けることが大切だと思います。

 使い分けを考える際、「キャリアドリフト」という考え方が役立ちます。

 キャリアの方向性さえ固め、節目となる転職や部署を変える「タイミング」さえデザインしておけばいい、という概念です。「キャリア」を「ドリフト」するタイミング以外は、「偶有性」に根ざし、目の前の仕事を頑張ることだけを考えていればいい。こういう考え方です。

 この「大量に試して、うまくいったものを残す」戦略にあえて反論するのであれば、「特定の環境下におかれていないと成り立たない戦略だ」とはいえます。

 たとえば、創業50年以上の老舗メーカーに務める営業マンが色々なことを試せるかと言われたら、そうもいかないことが多い。この戦略は、「大量に試す」ことが許される寛容な環境下に置かれていることが、前提条件になってくると思います。

 また領域によっても、「偶有性」に根ざす戦略の有効性は変わります。

 金融や不動産など、経験を積めば積むほど有利になりやすい領域もあります。たとえばファンドなどは、ひとつのプロジェクトが完了するまでに最短でも2~3年かかります。そしてディールに成功してお金を得れば得るほど、さらに大きなチャレンジを行え、リターンを増やしていくことができる。ひとつのことを突き詰めていかないと、頂点にいけない領域もある。

 一方でコンサルタントやクリエイターといった比較的自由な仕事だと、1つの仕事のタームが短いので、色々なことが試せます。つまり、「偶有性を大事にした戦略」は、自分が選んだ業種や業界によって、有効性が変わるわけです。

プロダクトドリブンと
マーケティングドリブンを行き来せよ

 キャリアを構築していく際、「プロダクトドリブン」と「マーケティングドリブン」を使い分けることが大切です。

 プロダクトドリブンは、今あるものを磨いたり、強めたりする方向性で行動すること。一方でマーケティングドリブンは、マーケットからのニーズを意識して動くことです。

 たとえば、カバンを作る職人がいたときに、良いものを作るための技術を高めるプロダクトドリブンなタイミングもある一方で、コンセプトや見せ方を考えるマーケティングドリブンなタイミングもある。その時々によって、すべきことは大きく変わってくる。

 キャリアにおいて、マーケティングドリブンなタイミングで大切なのは「第一想起を取る」ことです。「コーヒーといえばスターバックスだ」というように、「デジタルマーケティングなら◯◯さんだ」というイメージを、社内外で醸成できるかどうか。