デビュー作『転職の思考法』がいきなり、12万部。続く『天才を殺す凡人』も発売3ヶ月で9万部を突破するなど、今、最注目のビジネス書作家・北野唯我氏。今回は、新入社員が街に溢れるタイミングに合わせて、北野氏が今だからこそ言える、「20代のときに知りたかったこと」について寄稿してもらった。

「嫉妬の大海」から抜け出す、2つの武器【北野唯我】

「若い時もっとこうしていれば」
「あの時、なんで挑戦しなかったんだ」

 と後悔する機会は、年を重ねれば重ねるほど、増えるものかもしれません。今日は今だからこそ思う

「自分が20代のときに、本当に知りたかったこと」

 をこっそりお伝えできればと思います。

 このシーズンは新入社員の方、転職の方も多いので少しでも参考になれば幸いです。

「嫉妬の大海」から抜け出す武器とは

「嫉妬の大海」から抜け出す、2つの武器【北野唯我】北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。新卒で博報堂、ボストンコンサルティンググループを経験し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者。1987年生。デビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は12万部。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)は発売3ヵ月で9万部を突破中。レントヘッド代表取締役も兼務。

 まず知っておくべきは「嫉妬の大海」から抜け出すためには何が必要か?ということ。

 ある時、日本で最も勢いのある若手編集者と話していた時、「嫉妬」の話になりました。具体的には「嫉妬されることをどう思うか?」ついて。私はびっくりしました。なぜなら、私と彼とは考え方が180度真逆だったから。

 彼は日本酒を飲みながら「嫉妬されるのが気持ちいい」「嬉しくて仕方ない」と言っていました。

 対する私は「嫉妬なんて全くされたくない」「めんどくさすぎる感情の1つだ」という派。私も彼も「こいつ変なやつだなぁ」という目でお互いを見たのが印象的でした。皆さんはどちらでしょうか?

 さて、振り返ってみるとこの「嫉妬」という人間の感情は面白いもので、この嫉妬という感情によって様々なドラマや名作が生まれてきたのも事実。

 たとえば、古くは『こころ』などもそうでしょうし、『坊っちゃん』、あるいは、映画『スター・ウォーズ』にも様々な力に対する「嫉妬」が物語にうねりを生み出しています。嫉妬について描いた名作『アマデウス』はドンピシャの世界観です。

 そして言わずもがなですが、なぜこれらの小説や映画が面白いのか?というと、それはビジネスパーソンの人生そのものだからです。私たちはビジネスパーソンとして生きていく上で、何百、何千、何億とも呼べる「嫉妬の感情」の中で生きていくことになります。たとえば

「なぜ、アイツばかり目立つんだ?」
「あんなやつ、失敗してしまえばいいのに」

 口には出さないまでも、そんなことを思う人は世の中にはごまんといます。直接面と向かって言われるならまだしも、影で言われる。匿名で言われる。そんなケースもたくさんあるでしょう。

 では、そんなとき、どうすればいいのか?

 2つあります。1つは「人間力学を学ぶこと」。

 拙著『天才を殺す凡人』には、人間の基本的な3つの才能に関する関係図が示されています。

「嫉妬の大海」から抜け出す、2つの武器【北野唯我】『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)より

 この本は、どの角度から読むのか?によって、見え方が全く違う本ですが、「物語論」として読むという楽しみ方があります。

 物語論として読むというのは、映画やドラマのストーリーと照らし合わせて、「あぁ、あの映画でいうとXXが天才で、YYが秀才タイプだよね」という楽しみ方です。

 実際に読者の感想で多かったのは、最近ではドラマ『まんぷく』の主人公・今井福子と、創業者で天才・立花萬平の関係をなぞられた意見です。

※今井福子←→天才を理解できる凡人
※立花萬平←→天才

 では、なぜ、人間関係図を理解することが大事か?というと、自分をメタ認知する力を持つためだと私は思います。それは鳥の目のようなもので、自分を客観的に見る視点となります。

 振り返ってみると、結局、ほとんどの人はある時は「天才」であり、ある時は「秀才」であり、またある時は「凡人」でもあります。

 すなわち、ある時は嫉妬される側になるし、またある時は自分が「嫉妬する側」にまわることもある。これを理解することです。そうすれば少しだけ「嫉妬に対する立ち回り方」が理解できるはずです。

 2つ目は「数字に残る実績を持つこと」です。

 結局、嫉妬されることのデメリットというのは、「足を引っ張られること」です。感情的な嫉妬は、たしかにとてもとてもめんどくさいものですが、それほど実害はありません。

 ただ、それが「足を引っ張られること」につながると急に「実利的な損失」になり得ます。ではどうすればいいのか?

 それは「数字に残る実績を持つこと」。これしかありません。大事なのは実力ではなく、実績。しかも実績の中でも「数字に残るもの」であり、ポータブル(持ち運び可能)なものです。

『転職の思考法』の中には、自分の市場価値を3つのベクトルで整理しよう、と提案しました。

「嫉妬の大海」から抜け出す、2つの武器【北野唯我】『転職の思考法』(ダイヤモンド社)より

 この中でいうと「技術資産」です。たとえば、営業の仕事であれば、前年対比XXX%達成し、全社で一位になること、などです。

 なぜ、これが「嫉妬を避けること」になるかというと「あなたの選択肢を広げ、次のステージに行く切符だから」です。

 若くてして成果を出すことの最大のメリットの1つは「くだらない足の引っ張りあいをしなくていい人たちと一緒に仕事できる権利」だと私は感じます。なぜなら、仕事ができる人はそんな職場は選ばないからです。

 仕事というのはある一定レベル以上突き抜けると「嫉妬というよりリスペクトしあいながら切磋琢磨できる人たち」の世界に呼ばれるようになります。ただそこにはチケットが必要で、それこそが「数字に残る実績」です。

 新しい人が組織に増えるシーズン。ぜひ、この機会に、人間関係を学ぶキッカケにしてはいかがでしようか?