今回は税理士について採り上げてみたい。言うまでもなく「士」のついた「サムライ資格」であり、その資格名がそのまま職業名になるステイタスを持つ。都会では実感がないかもしれないが、いまでも地方では、税理士は町の名士になるためのパスポートである。

 サラリーマンが日頃接する職業ではないかも知れないが、中小商工業者や開業医、歯科医など、地方の経済を支える名士らから「先生」と呼ばれる存在なのである。都会では使い勝手が悪いかもしれないが、全国レベルで見れば、人生をリセットするには必要充分な資格といっていいだろう。IターンやJターン、Uターン指向の人にはうってつけの武器だ。

 さらにいいのは、この資格が現職のビジネスマンにとって、目指しやすい資格であることだ。この資格の取得方法をざっとおさらいしてみよう。

■その1(試験科目):

 5科目の試験をパスすれば最終合格。うち2科目は必修(簿記・財務諸表論)、1科目は選択必修(法人税または所得税)、2科目は選択(相続税法・消費税法又は酒税法・国税徴収法・事業税又は住民税・固定資産税・法人税または所得税のうち選択必修で選択しなかった科目)

■その2(科目合格):

 5科目いっぺんに合格する必要はなく、1年1回のみの試験で1科目づつの合格を貯めていってもいい。科目の合格は一生有効。

 この特殊な『科目合格』の制度のために、税理士試験は働きながら目指すのが珍しくない資格になっているのである。試験科目は、大学で言えば商学部の科目が網羅されている訳だが、他学部出身者にも比較的取り付きやすい科目である。

 さてここからが問題だ。実は税理士試験ほど、内部でさまざまな言い争いのタネになっている資格試験はないだろう。細かいところで言えば、選択科目で比較的楽勝の科目と言われる『酒税法』を選択・合格した税理士を「使い物にならない」などと貶める古参がいるのである。資格試験なのだから「易く合格する」は必勝セオリーなのだが、こうした物言いに受験生は惑いやすい。

税務署OBは
試験全免除で高優遇

 しかも、税理士試験には「科目免除」のシステムがある。有名なのは23年間税務署で徴税業務をおこなったものは試験が全免除になるというもの、いわゆる「国税OB」税理士の誕生システムである。

 そしてもう1つが「学位による免除」である。試験科目に近接する分野で修士号(修士論文が必須)を得たものは、一部の科目を免除するというものだ。この免除は税理士資格の大きな魅力なのだが、「非・免除」税理士からの「免除税理士」への風当たりはまことに強い。気の弱い受験生はさらに怯えてしまうだろう。