コンテンツスタジオ CHOCOLATE Inc.(以下、チョコレイト)の冨永敬氏と大澤創太氏、そのチョコレイトとタッグを組み動画サービス「瞬間ゼミ」に参画したダイヤモンド社の宣伝プロモーション部部長・松井未來氏、同社第一編集部編集長・市川有人氏による「4者座談」の後編。
「瞬間ゼミ」では、「先生役」となるスーツ姿の男性が「生徒役」となる若い女性の素朴な質問に答えながら話が展開していく。女性の相づちはとことんゆるく、くだけている。実現したその「ゆるさ」の裏には、ビジネス書を題材としたからこそのさまざまな葛藤があったようだ。本のつくり手、動画のつくり手はそれぞれ、どこに頭を悩ませたのか?

 

「速動画」では先生と生徒の対話形式でストーリーが進んでいく。

「受け売り先生」と「ゆるい生徒」がつくる謎の雰囲気

――「先生と生徒の対話形式」というフォーマットは、初めから決まっていたんですか?

冨永敬(チョコレイト プランナー) 1985年生まれ。香港育ち。広告のプランナーとして10年間、話題づくり、行列づくりに没頭。アクティベーションを中心に、CM、PR、デジタル、イベントと、多様な手法を武器に企画、実現する越境系プランナー。2015年より、メディアアーティストしても活動。特定の分野にとらわれず、新しい体験を生み出すべく企画・作品制作を行っている。2019年、ラクガキを仕事に。XR領域での好奇心拡張中。世界三大広告賞Cannes Lionをはじめ、国内外の広告賞を受賞多数。第21回メディア芸術祭「アート部門」審査委員会推薦作品選出。WIRED CREATIVE HACK AWARD2017 Finalist ほか。

冨永敬氏(以下、冨永) いや、外枠を固めていくうちに、徐々に決まっていったという感じです。「速動画」というコンセプトは早めに固まったんですけど、それをどう演出するかは試行錯誤を重ねました。

「速動画」とはいえ、ただ速度をあげて本の内容を要約するだけの動画では、絶対に頭に入ってこない。速度をあげる分、理解しやすいフォーマットを準備しなければならない。そこで考えたのが「対話形式」なんです。

対話でほのかに「ストーリー」をつくることで、速度をあげても視聴者の理解が追いついたり、授業の受け手の感情を「生徒役」に言わせることで共感をうながしたりといったことがしやすくなりました。

大澤創太氏(以下、大澤) 「生徒役」の相づち、軽いですよね(笑)。正直「いらないんじゃないか」という意見もあると思います。でも実は、あの相づちは重要な役割だと考えていて。あえて軽い相づちを挟むことで、動画全体にテンポ感が生まれたり、一方から発信され続けているよりも聞きやすくなったりといった効果があるんです。

市川有人(以下、市川) 対話は私も発見だなぁと思いました。このフォーマットが「瞬間ゼミ」のカギですよね。難しい話をわかりやすくする手法としての対話形式は、ソクラテス、プラトンといったギリシャ哲学の時代から使われている普遍的なフォーマット。それが最新の動画コンテンツにも取り入れられ、通用している点が面白いと思いました。

「フォーマット」という点ではもうひとつ、「テレビショッピング」のフォーマットも使われていますよね?(笑) 最初に「生徒役」の女性が「私、こんなことで困ってます」って先生に相談して、それに対して先生が「こうやって解決しましょう」と答える。高枝切りばさみの売り方と同じ(笑)。これって実は、実用書の「はじめに」のフォーマットともまったく同じなんですよ。短い動画の中でも、内容を魅力的に見せるためのフォーマットがしっかり踏襲されていることに感心しました。

冨永 実はもともと、市川さんがおっしゃる「私、こんなことで困ってます」の部分はなかったんですよ。でも動画作成を進めているうちに、「なぜ先生が生徒にこんな話をしているんだ」という必然性が見えづらいなと感じてきて、「こんなことで困ってます」を冒頭に入れることにしたんです。入れて正解でしたね(笑)

あと大きいのは、「著者が直接解説していない」という部分だと思います。

市川有人(ダイヤモンド社 書籍編集局第一編集部 編集長) 大学卒業後、文学・人文系出版社、ビジネス系出版社を経て現職。ビジネススキルからマネジメント、組織論、経営戦略、経済学、宇宙開発、人工知能、食事術、子育て、結婚論、田舎暮らしまで幅広いジャンルを担当。最新の担当書に『ニュータイプの時代』(山口周・著)など。

市川 なるほど。それは確かに書籍との大きな違いですね。

冨永 「瞬間ゼミ」の先生は、いわば「スーパー受け売り先生」(笑)。何もすごくない。でもその分、思い切って書籍のエッセンスを抽出することができるんです。あくまでも「本の要約」ではなく、「生徒役の女性に解決策を授けるべく、書籍のエッセンスを抽出しているだけですよ」という言い訳もしやすい。そしてそのほうが、動画の中では納得感を得られやすい。

市川 そこが面白いんですよね。書籍では必ず、「はじめに」で「著者は何者なのか」を解説するんですよ。でも「瞬間ゼミ」では、あえて「著者」と「話者」をずらすことで納得感をもたらしている

大澤 もしかしたら「沢渡あまねさんという著者のコンテンツをさも自分のもののようにしゃべるコイツは何なんだ」と思う方もいるかもしれないです。だけど先生役に「色」がない分、受け売りの言葉でも意外に納得してしまうんですよね。