厚労省は「所得代替率」重視をやめるべき

 厚労省の発表資料には、所得代替率が大きく出ている。これ自体がミスリーディングである。これを見て、「年金が減る」というイメージを持った人も少なくないはずだ。

 しかし、高齢者にとっては、受け取れる年金額(物価上昇率で割り戻した金額)が重要なのであって、現役に割負けているか否かは重要ではない。

 また、所得代替率の発表を受けて、マスコミの中にも、本当に年金が減ると誤解して報道しているところもあるかもしれないし、政府を叩きたい野党や一部のマスコミが、この数字を用いて故意にミスリーディングな表現を使うようになる可能性もある。

 そもそも、所得代替率という概念自体が不要ではないだろうか。例えば仮に現役世代の収入が10倍になり、高齢者の年金が2倍になれば、これは明らかに喜ばしいことで、素直に喜べば良いのである。所得代替率は大きく落ち込むことになるが、気にする必要などなかろう。

年金が減るとしても、政府は悪くない

「年金が減るから政府を批判する」という考え方は正しいとは言えない。少子高齢化が進めば、誰が総理大臣をやっていても「高齢者に支払う年金を減らす」「現役世代から年金保険料を多く徴収する」「両方やる」しか選択肢がないからである。

 野党も、年金については政府を批判するのではなく、政府と協力して今後数十年のビジョンを描くことに注力していただきたい。政府を批判する材料は、ほかに多数あるのだから、年金だけは別扱いにしてほしい。

 筆者としては、皆が70歳まで働いて年金保険料を払い、70歳から年金を受け取る時代が来ると予想しているし、そうなるべきだと考えている。人生100年時代、「20歳から60歳まで40年間働いて、老後の40年間を年金で暮らそう」などと考えるのは虫が良すぎる。

 ちなみに、経済成長率が高まって現役世代の収入が増えて年金保険料を多く払うようになれば高齢者の年金を減らさなくて済む。したがって「現役世代の収入を増やすような経済政策をやれ。現役世代の収入が増やせない政府は無能だ」という批判ならば、理屈は通っている。

 しかし、それならば年金を持ち出す必要はなく、単に「経済を成長させろ」と言えば良いだろう。そうした議論であれば、もちろん大賛成である。