哲学史2500年の結論! ソクラテス、ベンサム、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc。人類誕生から続く「正義」を巡る論争の決着とは? 哲学家、飲茶の最新刊『正義の教室 善く生きるための哲学入門』の第9章のダイジェスト版を公開します。
本書の舞台は、いじめによる生徒の自殺をきっかけに、学校中に監視カメラを設置することになった私立高校。平穏な日々が訪れた一方で、「プライバシーの侵害では」と撤廃を求める声があがり、生徒会長の「正義(まさよし)」は、「正義とは何か?」について考え始めます……。
物語には、「平等」「自由」そして「宗教」という、異なる正義を持つ3人の女子高生(生徒会メンバー)が登場。交錯する「正義」。ゆずれない信念。トラウマとの闘い。個性豊かな彼女たちとのかけ合いをとおして、正義(まさよし)が最後に導き出す答えとは!?
構造主義とポスト構造主義
「今日は残りの時間を使って、哲学史の一番最後のところ、構造主義とポスト構造主義について話をしよう。これらは実存主義の次に現れた哲学思想であるが、構造主義もポスト構造主義も、だいたい似たようなことを言っている」
「ようは、『人間は、何らかの社会構造に支配されており、決して自由に物事を判断しているわけではない』という話だ」
支配されて自由に判断できない?
なんかまた不穏な話だな。それが哲学史の最後ということは、現在最新の哲学がそう言ってるってことなんだよな。
「たとえば、囚人と看守の実験を知っているだろうか。スタンフォード監獄実験と呼ばれる有名な心理実験だが、これは普通の人々を集めて、くじ引きで囚人役と看守役を決定し、本当の刑務所のような境遇で暮らさせるという実験だ。」
「すると、不思議なことに、人それぞれの性格によらず、囚人は囚人らしく、看守は看守らしく、その立場に応じた振る舞いや顔つきをするようになったという」
へー、だんだんとその気になっていった、みたいな話かな。僕も生徒会長をやるようになってから、振る舞いが生徒会長らしくなったとよく周囲から言われるし、案外、人間ってそんなものなのかもしれないな。
「結局、この実験は、虐待が起きたり発狂者が現れたりと想定外の問題が発生し、途中で中止を余儀なくされてしまうのだが……」
え、マジか? 参加者、その気になりすぎだろ。