名門リバプール監督が絶賛、サッカー日本代表・遠藤航の「チームを強くする哲学」とは横浜Mに勝利し、笑顔を見せるリバプールの遠藤航(2025年7月30日、神奈川・日産スタジアム) Photo:JIJI

ヨーロッパサッカーの新シーズンが各国で続々と開幕している。世界最高峰のイングランド・プレミアリーグも今週末からスタートするなかで、日本代表で不動のボランチを務めるキャプテン、遠藤航は連覇を狙う名門リヴァプールで控えに甘んじている。来年6月にはワールドカップ北中米大会が待つ状況で、出場機会を激減させている遠藤はそれでもリバプール残留にこだわり、チームもまた32歳のベテランを必要としている。一見すると不思議に映る関係の舞台裏を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

世界に衝撃を与えた破格の長期契約
昨シーズンは風向きが一変

 森保ジャパンのキャプテンを担い、ボランチのレギュラーとして代役の効かない存在感を放つ遠藤航は、所属するイングランド・プレミアリーグの名門リバプールでは立場が大きく異なっている。

 ドイツ・ブンデスリーガ1部のシュツットガルトで、キャプテンを務めていた遠藤がリバプールへ移籍したのが2023年8月。当時30歳だった遠藤と結んだ4年間の長期契約は、ベテランの域に達した選手を迎え入れる条件としては破格すぎるとして、ヨーロッパサッカー界に大きな驚きを与えた。

 さまざまな方面から注がれる冷ややかな視線を、遠藤は実力で称賛の嵐に変えた。リバプールでの最初のシーズン。中盤戦からアンカーと呼ばれる中盤の守備的なポジションに定着すると、最終的にはリーグ戦で29試合に出場。そのうち先発は20試合を、プレータイムは1721分を数えた。

 しかし、昨シーズンになると状況が一変する。レギュラーからリザーブに序列を下げた遠藤の先発は、終盤戦だった5月のわずか1度だけ。リーグ戦には20試合に出場したものの、ほとんどが後半の残り数分から投入された遠藤のプレータイムは261分と、前シーズンから6分の1以下に激減した。