政界はもちろん、大企業やマスコミ、世論に影響を与える有名人に、それと知られずに近づき、意のままに操るCIA工作員。しかも、その工作員たちの「先生」は大正生まれの日本人女性だった。最近明らかになった、驚くべき真実とはーー。(ノンフィクションライター 窪田順生)

あなたの隣にもいる!?
CIAの協力者の実態

キヨ・ヤマダ
日本の大企業やマスコミ、政界などで今なお広く活動しているCIAのスパイたち。その先生は、なんと大正生まれの日本人女性だった

 ある全国紙で活躍する記者が大怪我を負って入院した。と、ほどなくしてきちんとした身なりの外国人が病室にお見舞いにやってきて、こんなことを言う。

「私はアメリカ大使館の政治担当オフィサーをしている者です。いつもあなたの記事を読ませていただき勉強させてもらっています。入院をしたと聞いて、いてもたってもいられなくなりお見舞いに伺いました」

 その後も足繁く通い、雑誌や食べ物などを差し入れてくるこの「親切な外国人」に、記者は徐々に心を開き、いつしか治療費などがかさんで今月ピンチだ、なんてグチまでこぼせるような間柄となっていた。

 そんなある日、米大使館員を名乗るこの男は、「お力になれるかもしれません」なんて感じで記者に「援助」を申し出てきた。気がつけば、この記者は取材活動の中で得られる日本政府や日本企業の情報を男に提供して、男が望むような記事を書く「協力者」となり、その関係はこの記者が「論説委員」になるまで続いたというーー。

 これは、ジャーナリストの山田敏弘氏が、日本で活動していた元CIA諜報員にインタビューして聞き出した「実際にあったエピソード」である。

「CIA」といえば、多くの日本人は映画のように派手なアクションを繰り広げるスパイをイメージするが、実はその国の政治家、役人、大企業の社員、そして世論に影響を与えるマスコミや有名人などに接近して、知らぬ前に「協力者」(エージェント)へと仕立てあげ、情報収集や工作活動に利用する、というのが彼らの主な仕事である。

 つまり、あなたのデスクの隣にいる人や、テレビに出ているあの有名人も、本人にその自覚のないまま、CIAの「協力者」になっているという可能性もゼロではないのだ。

 と言うと、「そんな落合信彦のスパイ小説じゃあるまいし」「中国相手ならわかるが、同盟国で、子分のように尻尾をふる日本にわざわざそんな面倒な工作活動なんてしないだろ」とシラける方も多いかもしれないが、それは大きな間違いだ。

 我々が想像している以上に、アメリカは日本へスパイを送り込んでおり、ゴリゴリの工作活動に励んでいるのだ。その動かぬ証拠とも言うべき人物が、2010年に88歳で他界したキヨ・ヤマダこと、山田清さんである。