『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』佐宗邦威氏の対談シリーズ第9弾のパートナーは、米国UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にて「ニューロサイエンス」を学んで飛び級卒業し、「脳×教育×IT」にまたがった事業を手がけるダンシング・アインシュタイン代表の青砥瑞人氏。
内発的な「妄想」からはじめる思考アプローチ「VISION DRIVEN」を提唱し、大きな話題を呼んだ同書だが、このような思考法にはどこまで脳科学的な裏づけがあるのだろうか? 創造性を生み出す脳の使い方とは? 両者による対談を全4回にわたってお届けする(構成:高関進 最終回)。

楽しめないなら「楽しがる」

佐宗邦威(以下、佐宗) デザインの勉強をするようになってから、フロー状態がずーっと続く、みたいな体験をすることが増えました。手を動かしていくと気持ちよくなってきて、いつのまにか長時間にわたって作業を続けているというような現象です。こういう状態をドライブしていくために、ニューロサイエンス的にはどんなことが必要なんでしょうか?

青砥瑞人(あおと・みずと)
DAncing Einstein(ダンシング・アインシュタイン)ファウンダー/CEO
日本の高校を中退後、米UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にて神経科学学部を飛び級卒業。脳神経の奥深さと無限の可能性に惹かれ、暇さえあれば医学論文に目を通す「脳ヲタク」。一方で、とくに教育には情熱を持ち、学びの楽しさと教えの尊さを伝えることが生きがい。研究者ではなく、「研究成果」を教育現場・ヒトの成長する場にコネクトし、ヒトの学習と教育の発展に人生を捧げている。脳×教育×ITを掛け合わせたNeuroEdTechを世界初で立ち上げ、この分野でいくつもの特許を取得している。

青砥瑞人(以下、青砥) 端的に言えば、楽しむことですね。「楽しむ」ができないなら、「楽しがる」。楽しがり続けることによって、楽しめるように脳は成長していきます。

楽しみ続ける、いわゆるフローの状態になるうえで重要なのが「ドーパミン」です。ドーパミンは海馬や扁桃体、エピソード記憶や感情記憶など、脳のさまざまなところに作用しています。ドーパミンによって好奇心が生まれ、「やりたい!」という心理状態が生まれます。

一般に、前頭前野にドーパミンが作用すると集中力が高まりますが、これが続くといわゆるフロー状態になると考えられます。しかし、GABAというホルモンが出て、ドーパミンを抑制するため、ドーパミンの作用はなかなか続きません。他方、このGABAを止める物質もあります。

佐宗 「“楽しんでいる状態”にブレーキをかける物質」を抑制してくれる物質というわけですね。

青砥 そう、それがベータエンドルフィンです。エンドルフィンは、「楽しい」「気持ちいい」と思っているときに出る快楽物質ですが、これにはGABAを抑制する効果があるのです。エンドルフィンが分泌されると、脳はさらにドーパミンを出しやすい状態になります。

「集中力は15分」というような俗説がありますが、あれはウソですね。仕事にしろ、マンガやゲームにしろ、ものすごく長時間集中している人は実際にいますし、脳のメカニズムとしても何かに没頭し続けることは可能です。ただし、そのためにはドーパミンが出やすい状態をつくって、「楽しい」が持続していることが大切なんですね。