「根拠のない自信」とは「希望」のことである

佐宗 ドーパミンが出やすい人と出にくい人というように、個人差というのはあるんでしょうか?

佐宗邦威(さそう・くにたけ)
BIOTOPE代表。戦略デザイナー。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授
大学院大学至善館准教授東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修了。P&G、ソニーなどを経て、共創型イノベーションファーム・BIOTOPEを起業。著書にベストセラーとなった『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社)など。

青砥 だいたいどんな脳もドーパミンは出せます。大きく違うとすれば、「何に対して出るか」でしょうね。ドーパミンは食べ物を見ただけでも出るんです。ただ、このとき面白いのは、ドーパミンが一番出るのは食べ物を食べる前だということですね。逆に、食べ始めてしまうと出ません。「○○したい」という願望がある人ほど、ドーパミンは出やすいんです。

我々が創造的になるうえではそこが重要なんです。人間の脳は、情報があいまいだったり不確かだったりする場合、即座に「あ、これは回避しよう」と判断を下します。こうした回避モードになると、脳はドーパミンを出しません。

さきほどの話につながりますが、だからこそ「根拠のない自信」は大事なんです。リスクが高かったとしても、回避モードにならずに「なんとかなるだろう」と思えるかどうか、ポジティブな面白い要素を探れるかどうかが、創造性には欠かせませんからね。通常、われわれの脳はネガティブな要素ばかり注意が向いてしまいます。

しかしそのなかにあるポジティブな面に意識的に目を向けるようにしていれば、多少の不確実性があることも「楽しそうだ」と感じられるようになっていく。そして、不確かであいまいな中で何かを見出した経験を繰り返してきた脳は、ネガティブさに埋もれたもののなかにも「チャンス」や「希望」を感じるようになります。

人工知能との共存で、より人間らしく

佐宗 青砥さんはこのような知見を、今後どのように世の中にフィードバックしていきたいとお考えでしょう?

青砥 僕は「ヒト科ヒト属ヒトという生物種の成長とウェルビーイングをいかに高めるか」をいつも考えています。ウェルビーイングの全体量を1%でも2%でも高められたら、世の中に対する大きな貢献だと思っているので、それを目指しています。

神経科学という新しい学問が、ようやく脳のブラックボックスを解き始めています。それを軸にしながら、人工知能なりなんなり便利なものを使って目標に向かいたい。人工知能は過去の経験をベースにして「99.9%無理です」と判断するのは得意です。でも我々人間の脳の強みは、不確かな残りの0.1%に対して、「何かあるのでは?」と向かっていけることです。

ただし、使えるところは人工知能も使う。その意味では、これからはまさに人工知能と人間の共存・共進化の時代に入っていくと思います。人間の強みと人工知能の強みのどちらもあるので、それを我々の成長にどんどん生かしていく。

佐宗 青砥さんはAIと人間の未来を考えたときに、人間にどんなことをしていてほしいですか?

青砥 より人間らしくなっていてほしい、と思っています。実際、人間の脳は、言葉で説明できるところ以外の分野が圧倒的に多いので、言語に支配されるのではなく、もっと非言語的なところ、感覚や感情をうまく使って生きていくことがより重要な時代になるでしょうね。

佐宗 僕自身、『直感と論理をつなぐ思考法』という本では、ある程度の学術上の成果は踏まえながらも、全体としては「自分の経験上、こういうやり方がいい」と考えたことをまとめました。しかし、今回の青砥さんとの対話のなかで、そこに書いたことの多くが、ニューロサイエンスの見地からしても、理にかなっていることなのだと確認できてすごくうれしかったです。本日はありがとうございました!

(対談おわり)