「メチャクチャ面白い。必読です」――山口周氏がそんなツイートを投稿するや、アマゾンのランキングが急上昇した一冊がある。戦略デザイナーとして活躍する佐宗邦威氏の『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』だ。
「ロジック」や「戦略」ではなく、個人の「妄想」を駆動力にする思考法を説いた同書を、山口氏はいったいどう読んだのだろうか? 他方、「アート」「美意識」に続くキーコンセプトをまとめた山口氏の最新刊『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』も、発売直後から大きな話題を呼んでいる。
こうしたテーマの本が、世の中に急速に受け入れられつつあるのには、どのような背景があるのだろうか? 今回より全3回にわたって、山口氏・佐宗氏による対談の模様をお届けしていく(構成:高関進)。

【山口周×佐宗邦威】強い組織には「出世しないけれど面白い人」が必ずいる

宮崎駿監督に学ぶ「妄想の具体化」

山口周(以下、山口) 佐宗さんの『直感と論理をつなぐ思考法』を読みはじめたとき、私が真っ先に持った感想は「また一人、仲間が増えた!」というものでした。この本では、「はじめに」に登場する1枚のイラストを含め、最初の10ページくらいにエッセンスが凝縮されていますよね。

ビジネスの側面から「妄想力」を語るというのは非常に難しかったと思いますが、本書は読んでいてとてもワクワクしました。読者からはどんな反応がありましたか?

【山口周×佐宗邦威】強い組織には「出世しないけれど面白い人」が必ずいる山口 周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。最新刊は『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』。
その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。

佐宗邦威(以下、佐宗) ありがとうございます。本の書き手として、とてもうれしい言葉です。「自分が見ている世界をよく表した本だ!」「ふだんから私が感じていたことを代弁してくれた!」という感想がすごく多かったですね。

また、音楽プロデューサー、大学生チームのサッカーコーチ、発達障害のNPOの運営人、第一線で活躍するデザイナー、小学校の先生など、さまざまな分野の方から感想をいただきました。

山口 また、読者が自分で体験できるように、とくに後半は極めてユニークかつ相当アクロバティックな書き方をされていますよね。

佐宗 そこには狙いが2つあります。第一に、僕はイノベーションやクリエーションの現場にいるわけですが、一見派手に見えるこういう世界こそ、むしろ、いつ形になるかわからないような継続的な努力が重要になると実感しています。だからこそ、単なる知識提供で終わらせたくないという思いはずっと持っていました。

「本に登場するメソッドを実践したくなった」「ノートを買ってみた」「カラーハントをやってみようかな」といったような感想も目立ちますので、そこはうまくいったのかなと手応えを感じています。

もう1つの背景としては、テーマの一つが「主観」だったので、それが作品としても体現されていないといけないなと。ですから、実務家としてどういうフォーマットで「主観=自分」を表現するべきかはすごく悩みましたね。とくに、「タコツボ化」されてしまった時代、「分断」されてしまった世の中を客観的に見渡すような「視点転換」の要素を必ず入れたいと思っていました。

その結果として行き着いたのが、本書の冒頭にもあるこのイラストです。