さらに衝突直後、中村被告の「はい、終わり」という音声が残されていた。この音声が「しまった」ではなく「やったぜ」という満足気なトーンだったことから、当初から殺意が疑われていた。

 控訴審初公判は7月3日に開かれ、弁護側が一審で再生されたドライブレコーダーの映像は一部だけだったとして、すべての映像を証拠採用するよう求めたが、樋口裁判長は却下。検察側と弁護側にさしたる応酬もなく、即日結審していた。

東名道事件では弁護側が法改正要請

 あおり運転と聞くと、東名高速道路で発生した夫婦死亡事件を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。

 あおり運転を受けた末、一家4人が乗ったワゴン車が無理やり追い越し車線に停車させられ、夫婦が後続の大型トラックにはねられ死亡した事件だ。

 17年6月5日夜、神奈川県大井町の東名道で石橋和歩被告(27)が静岡市の萩山嘉久さん(当時45)のワゴン車に、再三にわたって運転を妨害。高速道上にいた萩山さんと妻の友香さん(当時39)を死亡させ、同乗の娘2人も負傷させたとされる。

 この事件を巡っては、法に規定のない停車後の事故に自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪が成立するかどうかが焦点となっている。

 18年12月14日の横浜地裁裁判員裁判は石橋被告に「常軌を逸しており、強固な意志に基づく執拗(しつよう)な犯行で結果は重大」「真摯(しんし)に反省しているとはいえない」と厳しく指弾。前述の殺人罪より重い懲役18年(求刑23年)を言い渡した。

 公判では、検察側が高速道では停車して速度がゼロでも該当すると主張。あおり運転と夫婦2人の死亡と因果関係があるとしていた。

 弁護側はあおり運転から事故に至った経緯は追認しつつも、法に規定がない停車後の事故に危険運転は適用できないと反論していた。

 検察側は万が一、危険運転が適用されなかった場合に備え、予備的訴因として「監禁致死傷罪」でも起訴していたが、危険運転が認められたため判断は見送られた。