「あれ?見積額が違うじゃないか。私は『3000円から2800円に変更しろ』と言ったのに、3000円のままじゃないか。間違いだから訂正しておこう」

 Aはパソコンのキーボードを叩いて金額を訂正すると、再び画面をスクロールさせて元の位置に戻した。

Aの勝手な行動が
周囲の混乱を招く

 翌朝、乙社の担当者から見積書に関して電話で問い合わせを受けたC部長は、腰を抜かさんばかりに驚いた。

「何で見積額が変更されているんだ!?」

 すると、隣にいた部員が言った。

「昨日、Aさんが部長のパソコンを操作していましたよ」
「ナニーッ!!すると金額を変更したのはAさんか?」

 昨日席に戻ったC部長は、見積書が勝手に変更されているとは知らず、内容をきちんと確認しないまま乙社にメールしてしまったのだ。

 その日の午後、営業部を訪ねてきたAを見るやいなやC部長が尋ねた。

「Aさん、昨日、私のパソコンをイジリませんでしたか?」
「Aさん」と言われドキッとした。C部長の様子がいつもと違う。
「何か…?」
「乙社の見積書の件、今日の朝、先方から電話があり、金額が違うと指摘を受けました。調査したところ、私が離席している時に、Aさんがパソコンを触っているところを部下が見ていたと報告があったんです」

 Aは強い口調で反論した。

「あれは君が金額を間違えていたから訂正してやったんだ」

 C部長は首を横に振った。

「乙社から一昨日の夜連絡があり、急遽単価が3000円の別商品に変更されたんです」
「えっ?そうだったのか。知らなかった…」
「おかげで乙社から『しっかりして下さい』とキツイお叱りを受けました」