疑問が残る
京急の安全意識

 しかし、今回の説明とは裏腹に、京急は障害物検知装置とは別の、列車を踏切手前に自動停止させる安全装置を導入済みなのである。停車すべき列車が誤って通過した場合に、駅に隣接した踏切の遮断機が下りる前に、列車が踏切に進入することを防ぐ「踏切道防護システム」だ。

 下りホームのすぐ先に神奈川新町1号踏切が存在する神奈川新町駅を例に挙げれば、同駅に停車する特急、エアポート急行、普通は、踏切前に停車するブレーキパターンと列車速度を常に照らし合わせており、パターンを超えた場合は自動的にブレーキが作動する仕組みだ。踏切の安全を確保するために踏切手前で自動的に停車させるという点では、障害検知装置と連動したATSと同じ役割を持っている。

 違いがあるとすれば、「踏切道防護システム」の省令上の位置づけだ。国交省は2005年の福知山線脱線事故を受けて「信号の現示及び線路の条件に応じ、自動的に列車を減速させ、又は停止させることができる装置」の設置を義務付けた。

 この条項の解釈基準として、カーブやポイントなど減速区間、線路終端部と並んで、「駅を通過する列車と停車する列車の別により踏切遮断機の動作の開始時期を変えている踏切道において、駅に停車すべき列車が運転可能速度で誤って駅を通過してしまったときに、踏切遮断機の遮断動作が終了していない踏切道に進入するおそれのある場合」が挙げられており、これに対応したシステムになる。

 機械には2つの役割がある。ひとつは人間が見落としたときのバックアップ、そして人間では即座に対応不可能な複雑な問題を瞬時に解決する処理能力である。

 踏切道防護システムは運転士が列車種別を誤認し、停車すべき駅を誤って通過しないようバックアップする装置だ。しかし障害物検知装置には、運転士が特殊信号発光機を見逃した際のバックアップが存在しない。走行位置や速度によっては一瞬の判断が結果を左右する緊急性と突発性の高い状況であり、機械の判断が人間よりも適しているのは明らかだ。

 京急は「現場の判断」を重視し、機械任せにせず、さまざまな場所で人の手を介在させることで、複雑なダイヤ設定や、曲芸的な車両の分割・併合、高速運転や迅速な運転再開などを実現している。その独特な社風のファンも多く、業界の評価も高い。

 しかしそれが社員の過度の負担によって成り立つものであったなら、小さなほころびが、いつか大きな破綻に至る可能性も否定できない。筆者も、京急は特色ある唯一無二の存在であり続けてほしいと願っている。そのためには、特色ある輸送サービスに対応した、唯一無二の安全対策が必要になるはずだ。