OODAループはアメリカ軍で世界の兵法や戦略理論を研究した成果をもとに開発され、シリコンバレーの起業家を中心に、アメリカのビジネスエリートに活用されるようになった思考法です。変化の激しい時代に速く的確に行動するために必要な知的技術と言えます。OODAループ第一人者の戦略コンサルタントが、日本人のためにわかりやすく、実践しやすいマニュアルとして解説したのが、『OODAループ思考[入門] 日本人のための世界最速思考マニュアル』です。本書のウェブ版である本連載では、ポイントだけをよりコンパクトに紹介します。

「速くない」だけで3つもバツがつく、残酷な時代に私たちは生きているPhoto: Adobe Stock

速くなければ生き残れない3つの理由

OODAループ思考は、誰よりも速く決断して行動するための思考法です。

でも、そもそもなぜ最速でなくてはならないのか。その理由は、大きく3つあります。

1:速くなければ、選択肢がどんどん失われるから

売り切れ必至の人気メニュー。飲み会の席順。婚活における、いわゆる優良物件。世の中の多くのことは、厳正なる審査や抽選ではなく、先着順で決まります。

うかうかしているとほしいものは誰かにとられて、残ったものの中からしぶしぶ選ぶしかなくなる。選択肢がほとんどない状況です。

追い込まれてからあわてて選ぶのではなく、本当にいいなと思うものを自分の意思で選び取るためには、人よりも速く決断する必要があります。

2:速く動かないと、主導権を奪われるから

ぐずぐずしているうちに相手のペースに巻き込まれて、思わぬ結果を招いてしまった。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

家族旅行の計画を任されて北海道か沖縄か迷っていたら、しびれを切らした妻がハワイ旅行を決めてきた――というのは、私の知り合いの実体験です。彼は、ボーナスで買おうと思っていた高級時計を泣く泣くあきらめることになりました。

自分から先に動くことでこうしたリスクはだいぶ軽減されます。
会話も交渉ごとも人間関係も、主導権を握って自分のペースで進めたいなら、先手を取ることです。

3:速く動けなければ、チャンスが減るから

速く動けば、その分余計にバッターボックスに立つチャンスが増えます。三振を喫しても、凡打で終わってもかまいません。バッターボックスに立って、ピッチャーの投げる生きたボールを見た人にしかわからないことがあるからです。

ベンチャー成功の秘訣とされるフェイル・ファスト(fail fast)は、文字どおり速く失敗することを推奨したもの。1勝99敗が当たり前のベンチャーの世界で生き残れるのは、誰よりも速く、誰よりもたくさん失敗した人たちだけです。