米国は台湾関係法改正と
F-16戦闘機売却を決定

 1972年のニクソン訪中以来、米国は台湾から中華人民共和国へと乗り換え、北京政府の「1つの中国」という原則に理解を示し、台湾との外交関係を断ちました。その一方で、米国議会は台湾関係法を制定し、「連絡事務所」の名目で事実上の大使館を維持し、軍事援助も継続してきました。いわば二股をかけてきたのです。

 地政学的に見れば、台湾とフィリピンの間のバシー海峡は、東シナ海と西太平洋を結ぶチョークポイント(戦略的要地)であり、中東から日本に石油や天然ガスが運ばれるシーレーンです。中国人民解放軍が台湾に進駐すれば、沖縄やフィリピン、グアムの米軍に重大な脅威を与え、日本経済の命綱をも握ることになるでしょう。台湾の地政学上の重要性については、拙著『日本人が知るべき東アジアの地政学』でも解説しています。興味のある方はぜひご一読ください。

 習近平政権が南シナ海で展開したサンゴ礁の領土化作戦は、米国防総省を警戒させるのに十分でした。トランプ政権になってからの米国は、中国の軍事的台頭を警戒して台湾側への傾斜を強めています。米国議会は台湾旅行法を成立させて台湾要人と米国要人の相互往来を可能にしました。国務省は最新鋭のF-16戦闘機を66機、台湾へ売却することを承認しました。

 これは習近平政権にとっては由々しき事態です。しかし、中国人民解放軍が「台湾のリーダーは選挙で交代する」という現実を無視して占領すれば、台湾人の激しい抵抗を招くどころか、民主国家を武力で圧殺した独裁政権として、中国は西側諸国から糾弾され、制裁を受けるでしょう。米国トランプ政権による貿易戦争で、すでに青息吐息の中国経済が西側諸国全体を敵に回したらどうなるか、「終身国家主席」習近平の側近たちも、その程度の政治判断はできるでしょう。

香港デモは台湾人の独立心を刺激、
中国が仕掛けた「世論戦」は敗北間近

 とすれば、習近平政権は、台湾人自身が「中国復帰」を選択し、親中派の総統を選出するように台湾世論を誘導していくしかありません。いわゆる「世論戦」です。そのために中国はツメを隠して紳士的に振る舞い、「中国に復帰しても台湾の今の体制は変わらない、何も心配ないのだ」、と宣伝する必要があります。そこで習近平は「台湾の一国二制度」を打ち出しました。今年(2019年)、年頭の挨拶で習近平は、台湾政策に関する5大原則を発表しています。

・台湾との平和統一を実現する。
・「一国二制度」を台湾に適用する。
・外国の干渉と「台湾独立」分子を排除するため、武力行使をも放棄しない。
・中台の経済的な一体化を進め、平和統一への地ならしをする。
・「中華民族意識」を高め、台湾青年への工作を強める。