盤石のメンテナンス体制が
日系メーカーの強み

 タイ日野販売でシニア・ディビジョン・コーディネーターを務める山下教洋氏は「中国のバスはとても安価で、価格面だけでは太刀打ちできない状況です」と語る。業界でも「日本の車両の半値に近いのではないか」とさえ囁かれている。

 一方、長年にわたり東南アジア市場に携わってきた日野自動車のタイ・インドネシア事業部長・岩本顕氏はこう指摘する。

「商用車はメンテナンスが重要です。現地にアフターサービスを提供する整備拠点網がなければ、故障しても即時の修理が効かず、バスの運行が中断してしまう。商用車は稼働率を高めてこそ、と考える私たちは、長い時間をかけてタイでそのサポート体制を培ってきたのです」

 バス製造では90年近い歴史を持つ日野自動車は、バンコクの路線バス事業では42年の実績を築く。車両販売のみならず、ユーザーの稼働率を上げるためのトータルサポート体制に、今の中国系にはない“日系ならではの一日の長”がある。

 実際、バンコク市民も日々の生活の中でそれを目の当たりにしている。日系企業で働くフォーンさんは、「故障で立ち往生するバスをしょっちゅう見ますが、復旧も早くすぐに走り出しています」と語る。日野自動車が構築した直営の整備部隊が駆けつけ、即時の復旧作業を成し遂げているのだろう。「丈夫すぎて新車が売れないのでは」といった苦笑いすら漏れるくらいだ。

 一方で、日野自動車は2018年6月から9月にかけて、バンコク市内でハイブリッドバスの試験運行を行った。燃費のよさやCO2低減などを実証し、その結果はBMTAに報告済みだが、新車両の売り込みは中国メーカーも積極的だ。今年5月、ワチラロンコン国王の戴冠式の際、各国の使節団を乗せて会場への送迎を行ったのは中国バスメーカーだった。試験運行から1年、日野自動車はいまだ「返事待ち」の状態にある。