「奇跡の日本製バス」だが
バンコク市民の評価は微妙

 日本勢は将来においても新興国における市場シェアを維持できるのか。逆に中国勢の目に日本勢はどう映っているのだろう。中国自動車業界の第一線で活躍する大手部品メーカーの経営者に尋ねた。

「優れた技術、優れた品質――これを繰り返している限り、日本勢のシェア拡大は難しい。性能の引き上げ自体はもはやキリがありません。新興国では、たとえ耐久年数が5年程度であっても価格が3分の1なら、こちらを選んでしまう傾向が強い。車体が高価なら乗車料金にも跳ね返り、利用者の負担が増すからです」

 品質面においても“低価格の中国製”は侮れず、日進月歩の向上を見せている。バンコクに駐在し、貿易会社を経営する高田久雄さん(仮名)は、毎日の通勤でそれを体感しているという。

「バンコクでBTS(1999年以降に開通した公共高架鉄道)が開通して以来、この鉄道に乗り続けてきましたが、中国製の車両はほとんど揺れないのです」

 車両技術に詳しい高田さんに、「早晩、市場は中国勢に取って代わるのか」と尋ねると、「バンコクを走る日野のバスこそ、日本の基礎工業力の高さの象徴」だとして、次のように語ってくれた。

「これだけ古い車両なら車検も厳しいはず。しかも路線バスは客を乗せて走るだけに、安全面の要求値も普通の乗用車以上です。そんな古びたバスが、車検にも耐えこれだけ長期間走っているのは、もはや“奇跡”としか言いようがありません」

 だが、肝心のバンコク市民は、“奇跡のガタピシバス”ではなく「やっぱりエアコン付きの近代的な車両に乗りたい」(前出のフォーンさん)といい、中国製のバスを歓迎する。

“奇跡の日本のバス”とともに日本勢全体の行方が気になる。そのプレゼンスは中国勢に押され、次第にフェードアウトしてしまうのだろうか。