怒り心頭の厚労省は
新ビジネスを本気でつぶす

 9月6日、厚労省はリクルートキャリアに対して、職業安定法に基づく行政指導を実施。同時に、業界団体である全国求人情報協会向けに、役所らしからぬ感情的な文言で要請を行った。厚労省はリクルートHDが考案した「新しいビジネスモデル」を本気でつぶしにかかったのだ。

 そもそも、「リクナビDMPフォロー」で売買されたデータとはどんなものなのか。

 トヨタの場合、採用試験を受けた大学新卒学生の名簿をリクルートキャリアに提出、同社が「リクナビ」のプラットフォーム上で得られた個人情報(トヨタ志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか)からトヨタの「志望度の高さ」を数値化し、内定辞退率予測データと称して販売していたというものだ。

 要するに、学生が浮気性であるかどうかが分かる身辺調査のようなものである。身持ちが堅い学生の歩留まりは高くなるだろうという想定の下、「相場は400万~500万円」(購入企業関係者)ともいわれる高額データに、企業が群がったのである。

 厚労省は怒り心頭に発している。「リクルートの顧客は企業だけではなく、学生でもあるはず。ビジネスの起点を忘れるとは言語道断だ」(厚労省幹部)と手厳しい。

 まず、リクナビなど募集情報等提供等事業で得た個人情報を「選別・加工」して別の商品としてビジネスを展開した段階で、それはより規制の強い職業紹介事業の範疇になるとした。

 厚労省による新ビジネスつぶしの本気度は、二つの視点で分かる。

 一つ目は、就活学生が個人情報利用に同意しているか否かにかかわらず、採用合否の決定前に募集企業へデータを提供するビジネスをシャットアウトしたことだ。

 今回の事案は、職業安定法と並行して、個人情報保護法にも抵触するのだが、こちらは学生本人の同意さえ得られればビジネス続行の可能性はあった。その意味で、厚労省の決断は、一歩踏み込んでいるといえる。

 二つ目は、厚労省の怒りの鉄拳が、リクルートHDのみならず、データを購入した企業にも向けられていることだ。

 購入企業の多くは、「合否判定に使っていない」の一点張りだ。仮に合否に使った場合でも、社会的に責めを負うことはあっても法的責任を問われることはない。