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――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 アクティビスト(物言う株主)のダニエル・ローブ氏はソニーへの要求でまたも逆境に直面している。ただ、これが失敗というものであれば、ローブ氏はもっと多くの失敗を試みるべきだろう。

 ソニーは17日、ローブ氏率いる米ヘッジファンドのサード・ポイントが求めた半導体事業のスピンオフ(分離・独立)を拒否した。サード・ポイントは6月、15億ドル(約1600億円)相当のソニー株保有を公表し、事業分離を提案。アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマホ向けイメージセンサーを製造するソニーの半導体事業について、ゲームやエンターテインメント事業との関連性がほとんどないと主張していた。金融子会社ソニーフィナンシャルの株式65%の売却も提案していたが、ソニーはこれも拒否した。売却すれば約60億ドルの資金が得られるとしていた。

 ローブ氏は前回もソニーの事業分割を試みたが失敗に終わった。2013年には、映画・音楽事業の分離を呼びかけていた。

 ローブ氏の主張には一理ある。半導体事業や金融子会社はソニーの他事業との相乗効果が少ない。だがソニーが要求を拒んだのも驚きではない。日本では安倍晋三首相がコーポレートガバナンス(企業統治)改革を主導し、アクティビストの投資が拡大しているとはいえ、まだ初期段階にある。提案対象の2事業はソニーの前四半期営業利益の4割を占めていた。株主価値を高めるため今回提案されたような大胆な企業改革が行われるとすれば、日本では極めてまれな事例となる。

 ましてやソニーではその可能性は薄い。現経営陣は投資家の好感を得ている。2012年以降に再建を果たし、株価は8倍余りに上昇した。

 ローブ氏はスピンオフに関して運がないかもしれないが、たやすい利益は既にものにしている。サード・ポイントが株式を買い増していると4月に報じられると、ソニーは程なく2000億円の自社株買いを発表した。先月には、保有するオリンパスの株式5%を売却。売却額は約7億4000万ドルに上った。ローブ氏はオリンパスについて、ソニーにとり非中核的な株式保有であり、売却すべきだと指摘していた。ソニーはオリンパス株売却について、こうした要求とは無関係だとしている。

 ローブ氏は同様の手法で勢いを増すことができるかもしれない。ソニーはなお、医療情報サービス会社エムスリー株を53億ドル相当保有している。

 ソニー株はサード・ポイントの株式取得が報じられた4月以降、33%跳ね上がった。ローブ氏は勝ち星を数え始めるのが得策だろう。

(The Wall Street Journal/Jacky Wong)