「結石は見当たりませんね。がんも、オシッコの中に悪い細胞は出ていないから心配ありませんよ。血尿は膀胱炎ですね。高脂血症で、膀胱炎を起こしやすい状態にあるようです。肥満気味だから、糖尿病も危ないです。この子の犬種は遺伝的に高脂血症や糖尿病になりやすいから気を付けて。糖尿病になると、いろいろと怖い合併症があるからね。真剣にダイエットしてください」

 結石も、膀胱がんも「なし」。CT検査は不必要だったのである。A子さんはさっそく、動物高度医療センターでの検査をキャンセルし、もう、ヤギひげ先生のところには行かないことに決めた。エコー画像の質があまりにも違いすぎたし、糖尿病予防に効く漢方薬を処方され、言われた通りダイエットしたところ、以後、血尿は出なくなったからだ。

「ヤギひげ先生はいい先生だったけど、難しい病気は苦手だったみたい。獣医さんは、使い分けが必要ね」

 A子さんはご近所の犬友に体験談を語って回っている。獣医の診療手腕は個人差が大きい。普段の軽い病気なら、親切で良心的な近場の病院でもいいが、重病が疑われる場合には、ちょっと遠くても名医を探して行くべきだ。

 ちなみに、この話には後日談がある。愛犬は、セカンドオピニオンを受けた時点ですでに糖尿病だったようで、ほどなくして、全身に低温やけどのようなひどい皮膚炎が突然出現し、多飲多尿が始まった。9キロだった体重は1週間に2キロずつ減り、2週間で半分近くになった。

「このままだと、あと2週間で消滅かも」

 となったところでインスリン治療開始。体重も体調もなんとか持ち直したが、今度は糖尿病の合併症で白内障を起こし、失明してしまった。

「もっと早く、病院を変えていたら、糖尿病を発症しないで済んで、失明もしなかったかも。本当にかわいそうなことをしてしまった」

 A子さんは自分を責め続けている。