公正取引委員会の杉本和行委員長は、個別の判断になるとしながらも、一般論として、「自己の取引上の地位が加盟店に対して、加盟店のキャッシュレス決済事業者に対する取引依存度、キャッシュレス決済事業者の市場における地位、加盟店の取引先の変更の可能性等を総合的に勘案して優越していると判断されるキャッシュレス決済事業者が、一方的に手数料を上げているとかいうことにより、加盟店に対して不当に不利益を与えるといった場合には、優位的地位の濫用として独占禁止法上問題となるおそれがあると考えている」と答弁している。

 今回の消費税増税ポイント還元事業は、あまり消費者のためにならないばかりか、中小・零細事業者をかえって苦しめることにつながることが、こうした質疑からも明々白々となっているのだ。

 では、どうしてそうまでして、中小・零細事業者が苦境に陥る可能性があるにもかかわらず、消費税増税対策にかこつけてキャッシュレス決済の導入を推し進めようとするのだろうか?

 キャッシュレス決済を巡る日本、特に永田町や霞が関の認識に一つの問題があるのではなかろうか。

キャッシュレス決済が進んでいる
中国と比較する意味があるのか

 キャッシュレス決済の導入の話になると、導入が進んでいる中国と比較されることがとかく多い。

 しかし、中国の場合は、偽札が流通していることなどから通貨に対する信頼が低い、盗難に遭う確率が高いので現金を持ち歩きたくないといった事情があって利用されているという面が大きい。

 加えて、導入を推進する中国政府は中国政府で、国民の金の流れを把握するために進めていると聞いている。

 いずれにせよ「中国であんなに進んでいるのだから日本でも!」などという類の話ではないということだ。

 ところが、どうも多くの日本の政治家や官僚は「日本はキャッシュレスの導入が遅れている」と思い込んでしまっているようで、それに対して反論する政治家も少ないため、結果的にこの事業の追い風になってしまっているのだろう。

 そしてこうした状況を、キャッシュレス決済事業者が上手に利用して、キャッシュレス決済導入促進策としてのポイント還元事業を押し込んだのではないかとの話もあるくらいである。

 つまりは、消費税増税ポイント還元事業は、端的に言えば、ひとえにキャッシュレス決済インフラを提供しているプラットフォーマーのビジネスのためのものなのではないかということである。