今年春先に「日本はすでに景気後退局面にあるのではないか」という観測が広がりましたが、それに加えて直近では、日韓問題の経済への打撃が懸念されています。また、米中貿易摩擦の影響が深刻視され、世界的に見ても景気は下り坂に向かっています。そんななか、日銀短観などを見ても企業経営者のマインドは悪化傾向にあり、へたをするとビジネスパーソンの給料は、これから増えないどころか減っていく可能性だってある。いざ増税が始まると、人々は改めてそうした現状を再確認し、不安を募らせることでしょう。

――増税が始まるまでは、国民にとってある意味「自分事」ではない。増税が始まって、初めて「自分事」になるということですね。

 そう、実際に増税が始まると、みんな事の重大さに気づくのです。実は、前回もそうでした。2014年4月1日から始まった8%への消費増税では、5月過ぎまでほとんど「買い控え」が見られませんでした。消費者の財布の紐が猛烈に締まり始めたのは、7月に入ってからのことです。

 今回は、参院選前に「老後資金2000万円問題」が噴出したこともあり、駆け込み需要は前回の増税時と比べて盛り上がりに欠けています。それを見ても、国民の潜在的な危機感はむしろ大きいかもしれません。

安倍政権が直前まで
増税延期を模索していた可能性

――そもそも政府が、こうした時期に増税に踏み切った背景には、どういう考えがあったと思いますか。

 過去、消費税率引き上げに関与した内閣は、選挙で大敗するのが普通でした。だから政権にとって、増税は本来やりたいものでない。それを必要に迫られてやらなくてはいけないとき、最も重視するのは、自分たちにとって一番都合の良いタイミングを見極めることです。

 安倍政権にとって、それは選挙のタイミングです。彼らは過去2回の選挙で「増税延期」を表明して大勝しました。政権にとって鬼門である消費増税を先送りすることによって、政権基盤を強めてきたのです。だから今回も、7月の参院選に影響が出ないよう、つい最近まで消費増税の延期ができないかを探っていたフシがあります。

 今年4月、萩生田光一氏(元自民党幹事長代行)が増税延期をほのめかす発言をしたのが、よい例です。あれは実のところ、安倍首相の意を汲んだ観測気球で、国民が増税延期発言にどう反応するかを見たかったのでしょう。そうした観測も通じて、最終的に「このままもっていけそうだ」という考えに至り、増税に踏み切ったのだと思います。