分かりにくい両事件、続く公判前整理手続き

 最初の起訴内容である「金融商品取引法」だが、不正をして金品を我が物にする手口ではないので、一般の方々には何が罪なのか分かりにくいかもしれない。

 もともとは「証券市場における有価証券の発行・売買その他の取引について規定」した法律で、1948年に「証券取引法」として施行された。

 07年に現在の名称に変更されたが、ライブドア(LD)や村上ファンドを巡る事件で適用され、西武鉄道事件では「総帥」と呼ばれた元オーナー堤義明氏も逮捕された。

 LD事件では、東京地裁が判決で「証券取引では投資家の自己責任が求められる一方、正確な情報開示は必須」と指摘。元社長の堀江貴文氏に「証取法や証券取引所の情報開示制度の根幹を揺るがし、市場の公正性を害する極めて悪質な犯行」として実刑判決を言い渡していた。

 市場の公正性を担保するため、情報開示制度は重要な根幹をなすものであり、正確な報告内容でなければならない――というのが法の趣旨といえる。

 特捜部は、ゴーン被告がメールで側近の元代表取締役グレゴリー・ケリー被告(金融商品取引法違反の罪で起訴)に虚偽記載を指示。さらにケリー被告が執行役員ら部下2人に実行するよう指示したとみている。

 ゴーン、ケリー両被告側は不記載分について、退任後に受け取る予定で確定していないため、記載の義務はないと主張するとみられる。

 一方、公判期日の見通しも立っていない特別背任罪2件だが、知人らから何度か「投資で損した分を会社に負担させたり、会社の金を迂回(うかい)させて自分の会社に入金したりするのは、ハイニンとかじゃなくて、単純にドロボーじゃないの?」という疑問を耳にした。

 確かに、事件とは関係のない一般の方々の目にはそう映るだろう。ましてや、起訴内容が事実なら、公私混同の極みだ。しかし、特別背任罪というのは実に立件・立証が難しい罪でもある。

 刑法の背任罪は「他人に委託され事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または委託者に損害を与える目的で任務に背く行為をし、委託者に財産上の損害を与える」行為を指す。