一方の特別背任罪は会社法や商法、保険業法の特別罪で、「株式会社の発起人、取締役、監査役または執行役等が、自己もしくは第三者の利益を図り、または株式会社に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を与える」行為を指す。

 特別背任罪の方が罰則は重いが、任務違背行為があっても株式会社や社債権者の利益を図る目的だった場合は成立しないとされる。

 どういうことかというと、「会社のために行った」「適正な手続きに則った」と争い、その主張が認められれば罪には問われないということだ。

 特捜部は08年、中国の遺棄化学兵器処理事業を巡り、不要な支出で大手コンサルタント会社に損害を与えたとして、特別背任容疑で元社長2人を逮捕。

 2人は同罪で起訴されたが、東京地裁と同高裁は「経営判断として一定の合理性があった」などとして無罪を言い渡し、確定した。

 大阪地検特捜部も99年、担保不動産を巡る抵当権抹消詐欺事件で摘発された建設会社へ不正融資し、旧福徳銀行に損害を与えたとして元頭取や元専務らを逮捕。

 大阪地裁と同高裁は銀行に損害を与える図利加害は認められず「融資は銀行存続のためだった」として無罪を言い渡し、確定した。

 ゴーン被告が起訴された特別背任罪2件の内容が「会社のために行った」「適正な手続きに則った」はありえないような気もするが、一般社会の常識が通用しないのもまた、法曹界の常識でもある。

 こうした裁判の結果は違法かどうかではなく、検察側と弁護側のどちらの主張が適切かを競う「ゲーム」でしかないというのが司法担当記者らの一般的な見方だ。そして、初公判までにほぼ勝負は決するともいわれる。

 公判前整理手続きは、初公判ぎりぎりまで続く。