中吊りは手書き!
地域密着で愛される鉄道

 一見、もろ刃の剣ともいえるこの戦略であるが、これが「キャラ作り」として功を奏しているようだ。日本国内で現存する100社近い中小私鉄の中には、銚子電鉄と同様に経営状況が芳しくない会社は多いと思うが、これをセールスポイントとして活用できているのは同社だけだろう。誤解を恐れずに言えば、銚子電鉄の「貧乏キャラ」としてのイメージはすっかり確立されており、会社の認知度を高めるとともに、応援したいというファンを増やす効果をもたらしている。関連事業での売り上げ増はもちろんだが、銚電を盛り上げようと電車に乗る人が増えれば、本業である鉄道にも波及するだろう。

 潤沢な資金がないからこそ、費用を使わずして認知度を向上させるという逆転の思考法は、まさにブランディング手法のお手本とも言えよう。そのおかげで、銚子電鉄の自虐的な「貧乏キャラ」は今やすっかり定着した。危機的状況を包み隠さず明るく売り出すことがファンの共感を呼び、会社を応援しようという人たちも多くなったようである。

 同社のブランドイメージとしてもう一つ、「地域密着」も大きな特色であるといえる。

“極貧”を明かしたら愛された!銚子電鉄「逆転のブランディング力」手書きの中吊り。地元住民から愛される鉄道である Photo:Itsuki Nishiue

 実際に銚子電鉄に乗車してみて、まず目に飛び込んでくるのは中吊りなどの車内広告だ。きれいに印刷された広告が吊られているのが一般的だが、同社では地元店舗の手書きのものが掲示されている。一見、不揃いで見づらい印象だが、これが銚子電鉄の車内では、趣あるものに見えてしまう。

 また、吊り革には地元企業名や病院等の広告だけではなく、なんと出資した個人名までもが書かれている。地域住民からいかに愛されているかが推察されるし、これも長年銚子の街を走り続けてきたからこそ、なせる技であろう。実際、2014年1月に発生した脱線事故の影響で一時は運行できなくなった車両は、地元の高校生たちのクラウドファンディングを使った呼びかけにより資金が集まり、それをきっかけに復活を遂げた。

 銚子電鉄の車両は、まさに地域住民の思いを乗せて長年、銚子の街を走り続けているのだ。