ジャパンディスプレイ(JDI)の再建が暗礁に乗り上げた。相次ぐスポンサーの離脱で支援の枠組みは崩壊し、JDIは当事者能力を失った。混乱に乗じて経営中枢に食い込んだ一人の台湾人は鴻海精密工業創始者の郭台銘氏と関係が深い。打開のシナリオを描けるか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
「Suwaはまだ崩壊していない。ハーベストは数ある投資家の一つにすぎず、今後もいろいろなシナリオがある」。9月26日、JDIに金融支援を約束していた中国の嘉実基金管理(ハーベスト・ファンド・マネジメント)グループが支援を見送ることを明らかにした記者会見で、JDIの支援連合「Suwaインベストメントホールディングス」の最高執行責任者(COO)の許庭禎(ジェフ・シュー)氏は強気の姿勢を崩さなかった。
Suwaとは、JDIの金融支援のためにケイマン諸島に資本金1ドルで設立した資産管理会社。その最高経営責任者(CEO)を名乗る台湾人金融マンのウィンストン・リー氏が、JDIの支援連合を形成するため外部スポンサーと交渉を重ねてきた。
JDIは4月12日、Suwaがまとめた台湾・中国の支援連合から800億円の資金供給を受けることで基本合意。当時のスポンサーは、台湾の宸鴻光電科技(TPK)、台湾の富邦グループ、中国ハーベストの3社だったが、その枠組みは不安定で、6月にTPKが離脱を表明し、続いて富邦も支援を見送った。
支援連合崩壊の危機にひんし、Suwaは、ハーベストの支援増額と、香港のオアシス・マネジメントの参加を取り付けて、台湾・中国連合から中国・香港連合に組み替えた。だが、結局ハーベストが離脱することになり、その枠組みは瓦解した。
Suwaを通じたスポンサー交渉は失敗続きだ。かつてSuwaのリー氏とJDIの支援を巡って交渉をした関係者は「中国政府をバックにするハーベストがJDIに資金を出すようには見えず、Suwaの枠組みはいずれ破綻すると思っていた」と語る。
元々SuwaというJDIの支援連合の枠組みは、中国最大級のハーベストグループを中心とした構想だった。リー氏はSuwaの代表を名乗りながら、上海のハーベスト・テックのゼネラルマネジャーの名刺も持って外部スポンサーと交渉を重ねてきた。だが、その交渉に関わった誰もが抱いたのは「一体ウィンストン氏は、巨大なハーベストグループでどんな権限を持つのだろうか」という疑問だった。
実際にハーベストグループからJDIの支援資金を引き出すには、北京本社の決裁が必要だが、上海の出先機関のゼネラルマネジャーのリー氏に、その権限がないのは明らかだった。