餃子のように潰れた耳、太い首…
ラグビー人生が凝縮されたプロップの肉体

 中学生時代からプロップを務めてきた稲垣のサイズは身長186センチ、体重116キロ。今大会にプロップとして招集されている5人の平均も身長184センチ、体重117.2キロに達する。もっと飯を食え、もっと体重を増やせ、もっと強くなれ――を合言葉に、青春時代をラグビーにかけてきた証でもある。

 しかも、全員の首が驚くほど太い。全身の筋肉を鍛え抜く中で、特に重要なのが首となるからだ。人間の身体の構造では、首が向いている方向にしか体重をかけられない。必然的に相手チームとスクラムを組み合った瞬間から、首を介して壮絶な力比べのゴングが鳴らされる。

 首をまっすぐな状態に保ちながら、後方から与えられる力を余すことなく相手へ伝えていくために。そして、命にも関わりかねない首の怪我を防ぐために。例えば重いダンベルをぶら下げた紐をくわえ、頭を上下させ続ける壮絶な筋力トレーニングを、プロップたちは自らに課してきた。

 そして、プロップを含めたフォワード陣の耳には勲章が刻まれている。二重三重に耳が潰れて、まるで餃子のように丸まっているアスリートとは柔道やレスリング、ボクシング、相撲、そしてラグビーなど、相手との激しいコンタクトが避けられないスポーツで低くない確率で遭遇する。

 稲垣の耳も例外なく潰れている。プロップの場合は、言うまでもなくスクラムが最大の原因となる。首の取り合いが繰り返される中で、敵味方の耳同士が激しくこすれ合った末に皮下に内出血を起こす。注射で血を抜くのが治療法となるが、当然ながら練習を繰り返せば再び腫れ上がってくる。

 我慢しているうちに耳が餃子のように、海外ではカリフラワーに例えられる形へと変貌してしまう。ヘッドキャップをかぶる防止策もあるが、かえって痛いという理由で、着用が任意となる大学生や社会人になると使用しないフォワードが多い。

 アイルランド戦で右プロップとして先発したソウル生まれの25歳、具智元は左耳に白いテープを巻いてプレーしていた。味方の声も聞こえにくくなるヘッドキャップは嫌だが、耳が痛くなるのも嫌だという選手が取り入れる、精いっぱいの対策が白いテープとなる。

 縦にも横にも重厚なボディ。顔の幅よりも太いように映る首。そして、屈強な相手からも逃げずにぶつかってきた証となる潰れた耳。ラグビー人生が凝縮された三種の神器を引っさげながら、稲垣をはじめとするプロップはスクラムで肉弾戦だけでなく、さまざまな駆け引きを含めた頭脳戦も展開する。