10月4日、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、「暴力がエスカレートしている。政府として止める責任がある」として、行政長官の権限で立法会の手続きを経ずにあらゆる規則を適用できる「緊急状況規則条例」を発動すると発表した。そして、これに基づき、デモ参加者が顔を隠すことを禁じる「覆面禁止規則」が適用された。激化するデモにおいて、身元特定を防ぐためのマスクや、催涙弾などから身を守るためにヘルメット、ゴーグル、ガスマスクをデモの参加者が使用するのを禁止し、デモを抑え込もうという狙いだった。

 だが、ラム長官が条例発動を発表した同じ日、これに反発して激しいデモが起きた。再び警官がデモ隊に発砲し、14歳の少年の左太ももに被弾、病院に搬送された。翌5日、数千人の市民が「覆面に罪はない」「悪法には道理がない」と声を挙げながら、拘束されるリスクを承知の上で、マスク姿でデモ行進した。

香港政府の主張「正当防衛」は論外
プロが子どもに発砲するのはあり得ない

 この連載では、若者を中心とする抗議行動に対して、まったく手も足も出せない香港政府・中国共産党を、「権威主義体制」の限界を露呈した無様なものだと批判してきた(本連載第220回)。その無様さは、ついに中学生・高校生という「子ども」に向けて拳銃を発砲するに至った。

 香港政府は正当防衛だと主張する。中国共産党はそれを支持している。しかし、この主張は1つも擁護できるところはない。まったく論外である。いかなる状況であろうとも、訓練を受けたプロである警官が、子どもに銃を向けて発砲するのはあり得ない。

 最初の高校生に対する発砲は、至近距離から左胸を狙ったものだ。これは、偶発的とは言い難くあえて言えば、「子どもでも殺していい」と警官は指示を受けていたのではないだろうか。

 だとすれば、中華人民共和国の正体は「子どもを平気で射たせる国」ということになる。ちゅうちょなく子どもを射たせるのであれば、ある意味「天安門事件」よりひどい。