香港で特別行政府の方針に憤った市民が100万人規模のデモを起こしてから、3ヵ月がたった。この間、市民と警察の衝突は香港内外で何度も大きく報じられ、現在も大規模なデモは続いている。長期化する反政府デモの発端となったのが、特別行政府が立案した拘束中の容疑者の身柄引き渡しに関する法改正案で、市民の激しい反発によってこの法案は正式に撤廃された。しかし、多くの市民は法改正案の撤廃以外にも4つの要求を突き付けており、特別行政府と市民との間で着地点が見いだせない状態が続いている。筆者は12日から16日まで香港で取材を行い、異なるバックグラウンドを持つ市民から話を聞いた。(ジャーナリスト 仲野博文)
市民との間に生じた決定的な亀裂
香港警察の評判は過去最悪レベルに
香港の日常的風景になりつつあるデモ隊と警察の衝突。平和的なデモが過激化するターニングポイントとなったのは6月9日の抗議集会だった。100万人を超える参加者がビクトリアパークから立法府までの約3キロを行進。その日の夜、デモ参加者の一部が警察と衝突し、19人が逮捕された他、約360人が警察に一時身柄を拘束され、それぞれの個人情報は当局に記録された。地元紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、その日に警察に逮捕・一時拘束された約380人の8割が25歳以下の若者であったと報じている。
「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は9月16日、6月9日から本格的に始まったデモの取り締まりによって1453人が逮捕され、そのうちの1173人が男性で280人が女性であったと報じた。同紙によると、警察との衝突だけではなく、行進や集会に参加していただけの市民も逮捕され、12歳の子どもから72歳の老人まで幅広い年齢の市民が警察によって拘束されていた。
「警察の変わりように、ただただあぜんとしています。3ヵ月前までは、ここまでひどくはなかったのですが……」
九龍半島の西側にある油尖旺区に住む主婦はそう語る。