それにしても情けないのは日本
なぜ政治家は香港に対する発言がないのか?

 最後に、香港財界にお願いをしたい。香港財界は親中派である。中国は、香港を核とした国家プロジェクト「粤港澳(えつこうおう)(広東省・香港・マカオ)大湾区」を推進している。中国との経済的な結び付きが強まっている中で、香港財界は「いくらもうけてもいいが、政治には口を出すな」という中国共産党に黙って従ってきた。

 だが、逃亡犯条例の改正案については、国際社会から香港のビジネス環境が悪化したとみなされることを恐れて、反対に転じた。これに対して、中国共産党は香港財界への圧力を強めている。8月には、デモに社員が参加したとして、キャセイパシフィック航空を非難し、同社のルパート・ホッグ最高経営責任者(CEO)が辞任した。

 しかし、中国の露骨な圧力に対して香港財界には強い反発がある。若者の抗議行動が国際的に支持を高めている状況で、香港財界が親中派から民主派に寝返るのではないかと噂されている。これは、香港の今後に決定的な影響を与える可能性がある。

「香港行政長官選挙」は、立候補するには「選挙委員」(合計1200人)のうち、150人以上の推薦が必要であり、当選するには過半数の得票を得る必要がある。「選挙委員」は不動産、金融など35業界の代表で構成される。親中派が多数を占めるため、事実上民主派の候補者は立候補すらできない仕組みだ。

 だが、財界が民主派に寝返れば、行政長官選挙の「選挙委員」は民主派が多数派になる。つまり、民主派の候補者しか当選できない制度に代わってしまうことになるのだ。

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 そもそも2014年の「雨傘運動」は、この制度の理不尽さに反発して起きたものだ。だが、香港財界が民主派を支持すると決断すれば、ジョシュアさんやアグネスさんら若者が目指したものの大部分が実現することになる。香港財界には、歴史的な決断を下すことを願いたい。

 そして、香港財界が民主派に寝返るには、米国や英国、欧州連合(EU)、そして日本などの強い支持、支援が必要となる。既に、米・英・EUなどの閣僚、議会から香港の若者への支持が打ち出されているが、特にトランプ大統領が「米中貿易戦争」のディール(交渉)のカードや来年の米大統領選を有利にするネタ、という以上の意義を感じて、行動してもらいたい。

 それにしても、情けないのは日本だ。安倍晋三首相や閣僚をはじめ、自民党、公明党、野党の政治家、地方議員のほとんど誰もが香港に対して発言しようとしない。中国に「忖度」して、香港から目を背けているようにみえる。

 自由民主主義国の政治家として最も本質的に重要なことは、全面的に民主主義を擁護し、それを犯すものを一点の曇りもなく批判することである。日本の政治家は腰抜けだと断ぜざるを得ない。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)