来年の大統領選を意識したもので、こうした「再選第一」の姿勢に対しては米政権内でも、トランプ大統領が成果を急いで北朝鮮と安易な妥協をするのではという懸念が出ていた。

 だが、北朝鮮からすれば、自分たちは何の利益も得ていないのに、一方的に成果を誇るトランプ大統領の態度は許せなかったのだろう。

 朝鮮中央通信も6日の外務省報道官談話で、「米国は、自分の政治日程に朝米対話を盗用しようとする政治目的を追求しようとした」と批判した。名指しこそ避けたが、これは明らかにトランプ大統領への批判を意味している。

 元高官は「北朝鮮は、トランプ大統領だけが政治的成果を誇ることを許さないだろう。米国が何もしなければ、破壊した豊渓里核実験場の復旧作業だってやり始めかねない」と予想する。

 別の日本政府関係者によれば、北朝鮮は従来から、トランプ大統領が発信するツイッターを24時間体制でモニターしてきた。

 北朝鮮も米国の軍事的な脅威は恐ろしい。しかし、トランプ大統領が「北朝鮮の脅威は去った」と繰り返し、成果を強調する発言をしてきたことから、トランプ大統領が再び、強硬路線に戻ることはないと踏んでいるようだ。

 そんなことをすれば、自分の過去の発言を否定することになるからだ。

 だが、米国としては、北朝鮮側が求める、既に譲歩をした分の対価について、何もしなければ、北朝鮮はシンガポール米朝合意の破棄に動き、やはり「トランプはウソつきだった」と宣伝し始めるだろう。

 北朝鮮は「年末まで待つ」としているが、双方の綱引きがどこで折り合えるのかは見えず、米朝協議は崩壊の危機にひんしていると言わざるを得ない。

文政権の融和策空回り
日本は米国に追従するだけ

 こうした状況で、日本と韓国は何をしていたのだろうか。

 韓国の文在寅大統領は9月24日、ニューヨークで行った国連総会での一般党論演説で、南北の非武装地帯(DMZ)を国際平和地帯に変える構想を強調した。

 同じ日には、文氏は国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と会談し、2032年夏季五輪の南北共同誘致を進める考えも示した。

 だが、韓国政府がこうした構想について、事前に北朝鮮と調整していたとは考えにくい。