OPECの結束次第で原油価格の更なる下落

 足元の原油価格を見るうえで注意すべきは、実際の需給バランスは想定以上に緩和している可能性があるということだ。

 現在の価格水準が、実際の需給バランスよりも高く維持されている理由として大きく3つのことが考えられる。

 一つ目は、最大消費国である米国の個人消費が落ちていない中で、金融緩和による景気持ち直しの期待感があること。二つ目は、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟国による「OPECプラス」が大規模な減産を行っていること。三つ目は、サウジアラビアからの供給が完全に回復していないのではないか、あるいは、同様のテロが再び起きるのではないか、という供給面での懸念が払しょくされていないことによる。

 特に9月に起きた、サウジアラビアの石油施設へのドローン攻撃の持つ意味は小さくない。通常、テロ組織や武装組織の攻撃は小規模にとどまり、設備に被害が出たとしても2~3日で修復可能であるような場合が多く、大規模な供給途絶が発生するのは「国と国の戦争の時」しか想定されていなかった。

 しかし今回、テロ組織であっても、防空システムを突破して重要施設を攻撃可能であることが示された。テロ発生を予見して価格に織り込むことは難しいが、数百万バレル規模の生産途絶が即時に起きるかもしれず、価格上昇リスクは常に意識しなければならない。

 一方、OPECプラスが減産を継続できるかどうかは微妙になってきた。

 景気減速の局面では、OPECがいくら減産しても価格の下支え効果が限定的だ。こうした中、OPECプラスのメンバー国が減産に重要性を感じなくなる可能性があるからだ。

 例えば、原油を10%減産することで価格が20%上がるのならば歳入の増加に繋がる。しかし、10%減産しても価格が5%しか上がらないのであれば、他国に先駆けて増産してしまった方が歳入の増加に繋がるということである。

 実際、エクアドルが10月にOPECからの脱退を表明したことは、OPECに残って減産を遵守することの意味を見出せなくなったことを示唆している。

 今のところ、OPECプラスは年内の会合で減産を終了するとは言っておらず、むしろ価格維持のために減産幅の拡大を市場は予想している。だが、減産をやめる国が出てきてもおかしくはないだろう。そうなれば、原油価格は下落し、企業業績の下方修正による株価下落など、株式市場への影響も避けられないだろう。

(マーケット・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)